世界各地で猛暑や豪雨などが相次ぎ、多くの命が奪われている。海面上昇で国土が消失する恐れがある島などもある。各国がこの厳しい現状を直視し、危機を克服しなければならない。
ブラジルで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は、気候変動による災害に備える資金を2035年までに世界全体で3倍に増やすとした合意文書を採択し、閉幕した。
合意文書は、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ1・5度に抑える地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」の目標達成に向け、対策実施の加速を促す内容だ。協定には約200の国・地域が参加する。しかし争点となった「化石燃料からの脱却」を具体化させる工程表の策定には産油国などが強く反対し、賛同は80カ国ほどにとどまり記載されなかった。
協定は今年で採択から10年、COPは第30回の節目だった。脱炭素社会の実現に向けた各国の機運の低下と、複雑な利害の対立を露呈した形で、成果に乏しかったと言わざるを得ない。
米国の動向も影響した。気候変動問題を「史上最大の詐欺」と主張するトランプ大統領は、第1次政権に続きパリ協定の離脱を表明しており、政府高官の派遣を見送った。途上国向けの災害への資金を3倍に増やすことを決めたとはいえ、最大の支援国である米国の離脱で、その実効性は疑わしい。
米国抜きでは欧州など先進国の負担増が必至の情勢だ。各国は国際協調の重要性などを示し、米国に参加を強く働きかけるべきだ。
日本は、火力発電など化石燃料への依存度が高いため、工程表の策定に賛同しなかった。途上国向けの資金支援拡大にも慎重な姿勢を見せた。日本は、地球温暖化対策に後ろ向きだと、国際社会に受け止められても仕方がない。
日本は50年までの温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指し、火力発電で燃焼時に二酸化炭素(C O2)を出さないアンモニア、水素の活用などの技術開発を進めている。こうした先進的な技術の開発や途上国などへの供与、再生可能エネルギーの普及を通して国際社会に貢献し、日本の存在感を高めることが求められる。
世界の平均気温上昇を1.5度に抑えるには、温室効果ガスの排出を19年比で60%減が必要とされている。しかし、パリ協定参加国が提出した排出削減目標の水準では達成は極めて危うい状況だ。脱炭素の取り組みを停滞させている余裕はないことを、すべての国・地域が自覚する必要がある。
