大熊...まちづくり『ゼロ』から 復興へ挑戦「立ち止まらず前進」

 
大熊町が大川原地区に整備する復興拠点の予定地上空から太平洋方面を臨む

 東京電力福島第1原発事故で全町避難が続く大熊町は、町内の大川原地区に復興拠点を整備する。今はまさに復興のつち音が響き始めた段階で、ゼロからのまちづくりがこれから始まる。多くの苦労が伴うことが予想されるが、それでも町は、「立ち止まらずに前進していく」という気概を込める。町民の96%が帰還困難区域に居住していた町の復活に向けた挑戦でもある。震災から丸6年を迎える中、帰還を望む町民の期待が詰まった復興拠点の現状を探った。

 大川原地区に復興拠点 用地取得、造成に着手

 大熊町は、帰還を望む町民の受け皿として放射線量が低い町内の大川原地区(居住制限区域)に復興拠点を整備する。新たな都市計画が決定し、ほぼ全域の用地確保のめども立った。新年度から用地取得や造成に着手し、早期完成を目指して作業を本格化させる。

 都市計画は常磐道西側の約18.2ヘクタール。町役場新庁舎を2018(平成30)年度中に完成させ、19年度に会津若松、いわき両市の役場機能を集約して再開させる。新年度一般会計当初予算案に復興拠点整備や新庁舎設計の費用を計上した。

 帰還した町民のため、町営の災害公営住宅や福祉施設、町営診療所、交流施設などを整備する。さらに商業や産業、研究施設などの用地も確保し、生活再建できる環境を整える。将来的には復興拠点を拡大させる計画で、常磐道東側の約20ヘクタールを視野に入れている。

 都市計画の範囲外の開発も活発だ。東京電力給食センターが事業を始め、廃炉関係企業2社が進出し、メガソーラーも稼働した。東電単身寮には特例で約700人が暮らす。さらに町は植物工場を新年度から建設し、19年4月をめどにイチゴの生産を始める。

 課題もある。全町避難を経た「まちづくり」のため、町内には医療や商業といった生活インフラがなく、整備が不透明である。そこで、帰還当初は周辺自治体と連携し、段階的に環境を整えていく考え。渡辺利綱町長は「着実に計画を前進させたい」と言葉に力を込める。

 町民が帰りたいと思える環境づくりも急ぐ必要がある。さらに、町民の96%が暮らしていた帰還困難区域の整備も欠かせない。町は新年度から帰還困難区域の復興計画策定に取り組み、町中心部の下野上地区を第二の復興拠点にする。復興拠点の成否が町の将来を決める。