双葉...『働く拠点』整備進む 厳しい現状も町民の帰還意識高める

 

 町全域が避難区域に指定され、全町避難が続く双葉町。放射線量が高く立ち入りが制限されている帰還困難区域が面積の96%を占め、いまだ具体的な帰還時期は見通せない。厳しい状況は続くが、昨年3月末に残り4%の避難指示解除準備区域では除染が完了し、働く拠点としての整備が進む。ほぼ手つかずだった帰還困難区域の除染も、町が復興拠点に位置付けるJR双葉駅西側40ヘクタールで優先的に始まった。震災、原発事故から丸6年がたつ今、少しずつ復興への道筋が見え始めた。

 「第2次まちづくり計画」駅周辺に居住環境

 町民は3月1日現在で、全国38都道府県と国外に分散。半数以上の約4100人が県内で、約2800人は県外で暮らす。仮設住宅の入居者は設置当初から大幅に減り、多くの人が避難先で自宅を構えるなど新しい生活に踏み出している。
 復興の最大の壁となっている帰還困難区域は、政府が同区域に復興拠点を設け、5年程度で避難指示解除を目指す方針を提示。町はこの方針を踏まえて昨年末、今後のまちづくりの指針となる「第2次復興まちづくり計画」を策定した。
 計画では、JR双葉駅周辺に集合住宅や市街地を整備することなど、町内復興拠点のイメージを示した。復興拠点には、2022年から23年までに居住環境や商業施設を整備する。また昨年9月の町民意向調査などを基に、10年後の町内居住者の目標を2000~3000人に設定した。
 帰町時期までは示せていないが、復興拠点の整備時期や居住者の人数に具体的な数字を盛り込むなど、より踏み込んだまちづくりの方向性を示した。今後は政府の法整備を待って、町としての復興拠点の整備計画を政府に示す。国の認定が得られ次第、国費で除染やインフラ整備を進めていく。

 廃炉関連企業など誘致へ 第1原発の近さ生かす

 除染が完了した町北部の避難指示解除準備区域約200ヘクタールでは、町の働く拠点「復興産業拠点」の整備が進む。18年ごろまでにインフラを整備し、企業が活動できる環境を整える計画だ。
 産業拠点は東京電力福島第1原発から北西約4キロに位置し、廃炉作業の関連企業にとっては距離的なメリットがある。町はこの利点を生かし、廃炉関係の研究施設や東京電力復興本社(富岡町)、廃炉、除染関係の事業所を誘致したい考え。また、産業拠点に隣接して、県のアーカイブ拠点施設(震災記録施設)や一時帰宅者の交流施設の建設も予定されている。町はそれら全てを含めた約51ヘクタールの用地取得へ、地権者約70人と慎重に交渉を進める。
 ただ、他の避難自治体で避難指示解除準備区域の解除が進む中、双葉町は解除時期を示すことができていない。国による除染の遅れや津波被害が大きかったことから、インフラ整備など解除に向けた取り組みが進んでいないためで、町は産業拠点の整備状況に合わせて解除を進める方針だ。
 町の復興計画は少しずつ具体化しているが、復興の象徴となる存在の整備はどれもこれから。町民からは「復興が目に見えない」との声も聞こえ、昨年の町民意向調査では「戻らないと決めている」の回答が6割を超えた。今後の復興には、除染や復興拠点の整備とともに、町民の帰還意識を高めることが求められる。