学校再開...古里で教育『手探り』 児童・生徒数減少の課題に直面

  このエントリーをはてなブックマークに追加 

 東京電力福島第1原発事故による避難指示が解除された富岡、浪江、川俣・山木屋、葛尾、飯舘の5町村は今月、地元で幼稚園や認定こども園、小、中学校を再開させた。各町村とも児童、生徒数の減少という課題に直面しており、復興途上にある古里での教育の実践は手探りの状態が続く。

 長時間のバス通学負担

 【飯舘村】小中一貫教育校として村内で再開した草野、飯樋、臼石の合同小学校と飯舘中。75人が古里での学習に励むが、ほとんどの子どもは仮設校舎に通っていた時と同じく避難先からスクールバスで通学。村内で学校が再開したことで乗車時間が増え、片道約1時間かかることもあり、児童、生徒の負担が増しているのが実情だ。
 午前7時50分ごろからスクールバスが次々と学校に到着する。約1時間の"長旅"のせいか、子どもたちの表情はどこか、疲れ気味。ただ臼石小の佐藤育男教頭(49)は「仮設校舎の時と変わりはないんですよ」と子どもたちの様子を説明する。
 村は本年度、村が所有する8台に加え、民間業者に委託して計11台で子どもたちの登校を支えている。運行コースは、福島市発が8コース、伊達、川俣、飯舘の3市町村発が各1コース。最短ルートで村の学校を目指すが、どのルートも前年度と比べると、20~30分程度乗る時間が増えた。
 それでも合同小6年の杉岡佳朋さん(11)は「(通学は)長く感じるけど、バスは楽しいし、新校舎に通うわくわく感が強い」と笑顔を見せる。飯舘中3年の菅野竜生さん(14)は「たとえ何時間かかったとしても、村の学校に通いたいとの思いは変わらなかった」と打ち明けた。

 新設校の子ども増えず

 【川俣町山木屋】山木屋小、中学校は、今春に学校を再開した他の4町村と状況が異なり、原発事故後、他市町に避難せず町内で学校を継続したことが児童、生徒数に影響。新設の山木屋小中一貫教育校に通う子どもの数は15人にとどまっている。
 原発事故後、町内の学校を間借りして授業を継続したが、時間の経過に伴い避難先の学校へと転校する子どもが増えていった。学校再開に向けて町教委は震災がなければ山木屋小、中に通う予定だった57人を訪問。だが「町内で落ち着いている生活を変えたくない」の理由で就学希望者は増えなかった。
 この状況に町教委の担当者は危機感を募らせる。小学校からの教科担任制の導入や古里学習の実践などを通して「山木屋での教育の良さをPRして、一人でも多く山木屋で学びたいと思う人を増やすしかない」と強調した。

 交流拠点で郷土愛育む

 【富岡町】富岡一中校舎を活用して小、中学校を再開した。町は学校を、帰還した町民が気軽に足を運び、子どもと交流する「コミュニティー拠点」と位置付ける。避難により薄れつつある地域の絆を取り戻し、子どもたちの古里を愛する心を育む取り組みだ。
 校舎1階に整備した交流スペースを活用して、休み時間などに学校を訪れた町民と子どもたちが昔遊びや料理などを通して交流する。授業にも町民を「ゲストティーチャー」として招き、地域の歴史や文化などについて学ぶ機会を設ける予定だ。
 帰還困難区域を除いた地域の避難指示解除から1年が過ぎたが、町民の帰還は道半ば。再開した学校に通う児童、生徒は17人と少人数であり、同世代との対話の機会や世代間交流の機会の少なさが心配される。町教委の担当者は「学校を多くの町民と触れ合える場として、子どもの豊かな感性を育みたい」と語った。

 一体感で少人数教育

 【葛尾村】小学校は児童7人、中学校は生徒11人で新年度をスタートさせた。葛尾小は1・2年、3・4年、5・6年と3教室に分けた複式学級を導入。少人数のため、学習面では教諭の目が届きやすい一方、団体行動など児童、生徒の社会性をいかに身に付けさせるかが課題になっている。
 葛尾小は、川内村や田村市都路町の小学校と連携する方針だ。水泳や体育の団体競技などに合同で取り組む機会を設ける。葛尾中は特設陸上部を全員参加とすることで、全校生に一体感を持たせる。
 仮設校舎時代からの継続事業としては、運動会や学習発表会を幼小中合同で実施する方針。村教委担当者は「人数が少ないと一人一人の役回りは早い。人前で発表する機会を増やすことで、社会に出ても生かせるようにしたい」と話した。

 避難先学校と連携強化

 【浪江町】震災、原発事故から7年を迎え、役場の避難先だった二本松市に小、中学校を残しながら浪江町幾世橋の旧浪江東中校舎を改修したなみえ創成小、中を開校した。初年度の子どもの数は児童8人、生徒2人。町教委は、離れて学ぶ町の子どもたちの交流と学びを深めることが重要だと位置付けている。
 二本松と浪江にある学校間の距離は50キロに上り、児童、生徒の交流は容易ではないが、町教委の担当者は、現段階では決まっていないとしながら「学校行事や町の伝統行事・十日市のような大きなイベントに合わせて子どもたちを集めることが考えられる」とする。
 また、テレビ会議システムなどICT(情報通信技術)を活用して、日常から交流を進めていくことも検討している。