2019年に東京・池袋で発生した車の暴走事故の被害者遺族の松永拓也さん(38)は17日、福島県郡山市で講演し、命の尊さと市民一人一人が交通安全意識を持つことで防げる事故があると訴えた。
松永さんは、高齢ドライバーが車を暴走させて起こした交通事故で妻の真菜さん=当時(31)=と娘の莉子ちゃん=同(3)=を亡くした。
講演では真菜さんや莉子ちゃんと過ごした幸せな時間を紹介。「この生活がずっと続くと思っていたが、(事故で)それは幻想だったと思い知らされた」と振り返った。
松永さんは誰もが交通事故や犯罪の被害者、加害者になり得るとし、事故が起きなければ誰も不幸な目に遭わないと強調。「2人の命はかけがえのないものだった。今は全ての命が尊いと感じる」と語り、松永さん家族3人の日常にもあった「ただいま、おかえり」を言い合える社会を目指して各人ができることをしていくことが大切だと訴えた。
また、松永さん自身が事故後にインターネットや交流サイト(SNS)上で受けた誹謗(ひぼう)中傷などの経験にも触れ「ネットやSNSの歴史は浅く、学校教育では限界がある。家庭でも教育の一環と捉え、親と子で一緒に向き合ってほしい」と提言した。
松永さんは関東交通犯罪遺族の会(あいの会)副代表理事を務め、交通事故撲滅や犯罪被害者支援の拡充に取り組んでおり「犯罪の被害に遭った際には警察や民間の支援機関に相談してほしい」とアドバイスした。
講演会は郡山市交通安全母の会の結成60周年記念で開かれた。