DNAの片方が傷を修復

 

 DNA(ディーエヌエー)は生物が生きていくために必要な全ての設計図の原本を集めた、巨大な辞典のような役割を持っています。A・T・G・Cという四つの文字だけを並べることによって書かれた暗号のような辞典です。この設計図の原本一つ一つのことを、「遺伝子」と呼ぶこともあります。

 巨大な辞典を毎回開いて調べるのは大変です。そのため、辞典から必要なところだけコピーされた設計図を使って、タンパク質を作るのでした。そのコピーのことをRNA(アールエヌエー)と呼びました。なかでも設計図の意味合いを持つRNAのことをmRNA(メッセンジャーアールエヌエー)といいます。このRNAはコピーされたものなので、ずっと細胞の中で保たれるわけではなく、数分から数日ぐらいの時間で分解されていきます。

 では、原本であるDNAの一部が傷ついたり、なくなったりすることはないのでしょうか?

 原本が簡単になくならないように、生物のDNAは左手と右手のように、対となるもの二つがセットになって存在しています。DNAはハシゴをねじったような構造といわれますが、ハシゴを立てた時の、左右の支柱の一本ずつがそれぞれ原本なのです。

 そのため、原本の片方が傷つくと、もう片方の原本を参照して、傷ついた原本をしっかり修復することができるのです。