【首長に聞く】吉田数博浪江町長 帰還など促進へ水素を利活用

東京電力福島第1原発事故により全町避難し、2017(平成29)年3月末に一部地域で避難指示が解除された浪江町。吉田数博町長は「水素を利活用したまちづくりで、帰還と移住定住を促進させる」と話す。
―1月末現在の居住者数は1579人と、震災当時の1割未満にとどまる。
「復興計画で2035年までに8000人の人口目標を掲げている。厳しいが不可能ではない。帰還と移住定住の促進は重なる。農林水産業の再生をはじめ、教育、買い物、医療介護、放射線の不安払拭(ふっしょく)など、生活環境を一体的に整え、持続可能な町をつくっていく」
―住む場と働く場の確保が課題だ。
「家屋解体が進み、移住したい人が住宅の確保に苦労している。住宅整備を進め、中心市街地のJR浪江駅周辺の再生に注力する。商業施設や交流の場も設け、『町の顔』である駅周辺のにぎわいを取り戻す。同時に企業誘致を図り、新たな雇用を生み出していく」
―移住定住の促進に向けて何をアピールするか。
「町は再生可能エネルギーの地産地消に取り組んでいる。昨年には『なみえ水素タウン構想』を打ち出した。水素を新たなまちづくりに生かすことで脱炭素社会をけん引し、関連産業を振興する。若い人に魅力を感じてもらえるよう、水素を利活用したまちづくりで帰還と移住定住につなげたい」
―帰還困難区域は今も町土の約8割を占める。
「まずは23年春の解除を目指す特定復興再生拠点区域(復興拠点)約660ヘクタールの整備をしっかり進める。しかし、それはごく一部にすぎない。何年たっても古里に帰りたいと思う町民はいる。国は一日も早く拠点外の除染や避難指示解除の方向性を示し、拠点から外れた町民の心の痛みを取り除いてほしい」