仙台国税局は10日、今年の東北清酒鑑評会の結果を発表した。吟醸酒の部では代表銘柄「さかみずき」で知られる、たに川酒造(郡山市)が初の最優秀賞に輝いた。東日本酒造協業組合(二本松市)は吟醸酒、純米酒の両部で次点の評価員特別賞に選ばれた。
福島県、優等賞21点5年連続で最多
本県からは吟醸酒の部に12点、純米酒の部に9点の計21点が上位賞を含む優等賞を受け、県別の優等賞受賞数は5年連続で最多だった。
東北地方には毎年春の全国新酒鑑評会で金賞を獲得する蔵元が多く、東北清酒鑑評会は全国トップレベルの鑑評会ともいわれる。純米酒の部の最優秀賞は、わしの尾(岩手県)だった。
今回は2024酒造年度(24年7月~今年6月)の清酒を対象に1製造場当たり2点以内の出品を受け付けた。東北6県から吟醸酒の部に109製造場の120点、純米酒の部に122醸造場の141点の出品があった。
10月に行われた審査では、仙台国税局や酒造技術の指導機関の担当者、杜氏(とうじ)らが味や香りを総合的に評価した。優等賞に選んだ吟醸酒の部40点、純米酒の部44点から各部の最優秀賞1点、評価員特別賞2点を決めた。
【県内の優等賞】
吟醸酒の部=曙酒造(会津坂下町)白井酒造店、末廣酒造博士蔵(会津美里町)花春酒造(会津若松市)佐藤酒造店、たに川酒造(郡山市)千駒酒造(白河市)松崎酒造(天栄村)ほまれ酒造、大和川酒造店、吉の川酒造店(喜多方市)東日本酒造協業組合(二本松市)▽純米酒の部=曙酒造(会津坂下町)末廣酒造博士蔵(会津美里町)鶴乃江酒造(会津若松市)笹の川酒造(郡山市)三春酒造(三春町)松崎酒造(天栄村)ほまれ酒造、吉の川酒造店(喜多方市)東日本酒造協業組合(二本松市)
たに川酒造、熟成進み香り高く
たに川酒造(郡山市)は初めての最優秀賞受賞。山田平四郎社長(72)は「酒造りの苦労が報われた」と喜びを語る。
ここ数年は猛暑の影響で、硬いコメをどう扱うかに頭を悩ませてきた。今年は仕込みの工程や温度管理など細部で工夫を重ねた結果、香り高い酒に仕上がり、春の全国新酒鑑評会では6年ぶりに金賞を受賞した。一方、お盆過ぎに熟成が進み、過剰に甘さが出る「甘ダレ」を懸念していたが、例年より香りが高かったこともあり「貯蔵してもおいしさを確保できた」という。
現在、コメは兵庫県産の山田錦を使用しているが「県産の酒造好適米を使ってお酒を仕込んでいきたい」と山田社長。「『チーム福島』として、各蔵元と切磋琢磨(せっさたくま)しながら、県産日本酒の品質をもっともっと上げていきたい」と意気込みを語った。
東日本酒造協業組合、上品な甘味と酸味調和
吟醸酒部門は「大吟醸雫酒十八代伊兵衛」、純米酒部門は「純米大吟醸雫酒金之丞」で評価員特別賞を受賞した「奥の松」醸造元の東日本酒造協業組合。初のダブル受賞に、奥の松酒造の遊佐丈治社長(62)、杜氏の殿川慶一理事(75)は「硬い酒米に苦慮したが、高い評価で非常にありがたい」と喜んだ。
いずれもフレッシュな青リンゴを思わせる爽やかで華やかな香りと、上品な甘味と酸味のバランスが高い評価を受けた。2人は「国、県の研究機関と情報を共有しながら、一からチャレンジしていく」と受賞に酒造りへの決意を新たにした。
