【働き方変革】建設業・医師、工程管理「見える化」 担い手確保

 
「ビルモア」で使用する写真撮影のためドローンを飛ばす陰山建設の社員。業務の効率化につながっている

 「2024年問題」の影響は、運転手だけにとどまらない。建設業界では工期の延長や価格上昇などが懸念されるが、その中で他社に先駆けて業務効率化などの取り組みを進めてきた企業がある。郡山市の陰山建設は、グループ会社が開発した建設現場の進捗(しんちょく)状況などを「見える化」するアプリを導入して現場の負担を減らすなど、業界が直面する課題への対応を急ぐ。

 「元請け、下請けから取引先まで全ての関係者がこれまで以上に計画をしっかり立て、工程管理をしていくことが求められている」。陰山正弘社長(48)は指摘する。発注者側と協議して適切な工期を設定するとともに、現場の作業時間をできるだけ確保することが一層重要になると考えている。

 グループ会社が開発したアプリ「ビルディングモア(ビルモア)」は、工事の進捗率やドローンで撮影した現場写真をスマートフォンなどで随時確認できる仕組み。現場に頻繁に足を運ばなくても状況が確認できるといった顧客側の利点のほか、現場写真や書類を整理する手間が省けたり、アプリ内で勤怠管理ができたりといった作業員側のメリットもある。

 残業手当の減少対策として、基本給を底上げするベースアップも実施。ビルモアの導入など準備を進めてきたことから、規制強化後も現場に大きな影響は出ていないという。

 ただ、陰山社長は業界全体で労務管理などの意識を高めていく必要があると考えている。「将来の担い手確保の視点からも魅力ある職場環境づくりに取り組んでいきたい」

 診療いずれ限界

 時間外労働の上限規制は医師にも及ぶ。現在の常勤医は6人という三島町の県立宮下病院。導入から1カ月、現状では大きな問題は発生していないものの、横山秀二院長(53)は「人員的には厳しく、何とか回せている状況だ」と危機感を募らせる。

 同病院では通院が困難な患者の住居を医師が訪問する在宅診療も担う。医療圏は広く「移動時間など、患者を診ること以外の労力も大きい」と横山院長。今後、在宅医療のニーズが高まることも予想され「現状の人数だといずれ限界になる」と懸念を示す。

 近隣町村には公営診療所が1カ所ずつあるのみ。医師が診察できない場合は宮下病院から医師を派遣し、地域医療を支えている。

 さらなる常勤医確保に向けて有効な手だてが見えない中、横山院長は「県と福島医大が連携し、医師確保のための取り組みをさらに進めてほしい」と願った。