ふるさと納税、熱い自治体間競争 返礼品にオーディオや馬刺し

 
返礼品の馬刺しを梱包(こんぽう)する事業所=会津若松市・馬さしの鈴静

 ふるさと納税を巡る自治体間の競争が熱を帯びている。4年連続で過去最高額の見通しとなった県内59市町村の2023年度寄付受け入れ額。県内自治体の担当者は増額のため新たな返礼品を掘り起こしたり、返礼品を掲載するポータルサイトの数を増やしたりして工夫を凝らす。担当者の一人は「ふるさと納税が地元経済の活性化につながっている。今後もPRしていきたい」と話す。多くの寄付を得るための競争は今後も続きそうだ。

 寄付額で県内上位となった自治体は特色ある返礼品の選定に力を入れる。白河市は22年度から、市内にある工場で製造したオーディオ機器を返礼品に追加。オーディオ機器の人気が寄付額全体を押し上げ、22年度比で3倍となった。

 同じく寄付額が22年度比で3倍となった本宮市では、全体の98.3%が返礼品としてアサヒビール関連商品が選ばれた。市内に工場がある強みが増額につながった形だ。

 工場の撤退などにより、アサヒビールを返礼品に取り扱う自治体が全国で減ったことも影響したことから、市の担当者は「アサヒビールの返礼品がある自治体として認知度が上がってきた。波に乗って地場産品も選んでもらえるよう取り組む」と力を込めた。

 22年度比で寄付額が3倍となった会津若松市は、遺贈寄付が多かったことに加え、返礼品の登録制度が影響したとみる。市は23年度から登録制度を設け、これまで対面などで行っていた返礼品の審査を書類に変更した。手続きが簡単になり事業者からの応募が増え、返礼品の種類が増えた。

 登録制度を通じて返礼品に馬刺しが追加され、多くの寄付が寄せられているという。市の担当者は「さらに返礼品の種類を増やし、情報発信に努めていきたい」と話した。

 寄付額が前年度の約1.7倍となり、過去最多の9億2千万円に上ったいわき市。市の担当者は「(東京電力福島第1原発の)処理水放出に伴う応援が大きかった」と分析する。処理水放出が始まった昨年8、9月の寄付額は全体の半数超の約4億7530万円となった。

 返礼品として、風評被害が懸念された海産物の加工品が選ばれる傾向が強く「漁業を応援します」「海産物を食べて支えます」といったメッセージも寄せられたという。

 「違和感」の声も

 県内自治体のうち、寄付額が下位となっている平田村の沢村和明村長は、ふるさと納税について「ありがたい仕組みだが、入る額も年ごとに増減する。商品開発やPRをするにも資金がかかるし、ふるさと納税を当てにした行政はできない」と考えを語った。

 その上で、沢村村長は「当初は生まれ育った地域を応援する制度だった印象だが、最近は自治体同士で競争をさせられているようで違和感がある」とも述べ、過熱する競争への疑問を呈した。

 ふるさと納税 地域活性化を主目的に2008年度に始まった。実質は寄付で、収入などから決まる上限額を超えなければ、自己負担分の2千円を除いた全額が所得税と住民税から差し引かれる。返礼品として、寄付額の3割以下相当の食品などを贈る自治体が多い。