【県民との約束・内堀県政2期目の課題】 食と観光...どう融合

 

 「外国人に一方的に売り込むだけでなく、『福島に行ってみたい』という自発的な感情を抱いてもらうことが大切だ」。農産物の加工品や日本酒などの県産品が並ぶ福島市の県観光物産館。館長の桜田武(48)はインバウンド(訪日外国人旅行者)を呼び込む糸口を語った。本県の観光業、農業関係者からはインバウンドを原発事故に伴う風評の払拭(ふっしょく)、人口減による消費低迷打開への活力として期待する声が上がる。

 政府が推進している施策が波及しつつあり、本県の外国人延べ宿泊者数は2017(平成29)年に9万4000人(前年比32%増)を記録。全体に占める国別割合は親日的な台湾の25%が最も大きく、中国や東南アジアからの来県も目立つ。一方で、今なお25カ国・地域が県産食品の輸入規制を続け、国内でも農林水産物の多くの品目で他県産との価格差や販路が回復していない。

 「外国人に消費してもらうことは経済効果だけでなく、風評払拭に向けて輸出以上の効果をもたらす」。内堀雅雄(54)は福島民友新聞社の再選インタビューで食とインバウンドを融合する新たな試みに言及した。これまで別々に行われてきた取り組みを掛け合わせる考えで、2期目の重点政策と位置づけ2019年度県当初予算案での具体化を示唆した。

 外国人延べ宿泊者数の増加は本県に対する負のイメージが和らいでいる証拠でもある。県は海外から社会的影響力のある人を県内の景勝地などに招き、会員制交流サイト(SNS)に投稿してもらう事業を展開している。この事業は一定の成果を得ているが、食を観光の目的としてアピールする意識はまだ薄いのが現状だ。風評払拭に特効薬はないが、好調なインバウンドに食を結び付ければ、県産品の安全性やおいしさが世界に発信される相乗効果も見込まれる。

 果樹や日本酒などは本県が強みとする観光資源でもある。収穫体験者を受け入れる福島市のまるせい果樹園には1日数人程度の外国人観光客が訪れており、社長の佐藤清一(48)は「来てもらった外国人においしさを口コミで広めてほしい」と願う。交流人口拡大の大きな起爆剤となる2020年東京五輪・パラリンピックが間近に控える。インバウンド増加、風評払拭など個別に掲げた公約を絡め、各部局の垣根を越えた取り組みに発展させる必要に迫られている。(文中敬称略)