【県議選・ふくしまの課題】健康/運動習慣改善進まず

 

 伊達市の梁川寿健康センターの一室で20~80代の住民が講師の動きに合わせ、体をひねったり、足踏みをしたりして体を動かす。「いい汗をかいた」。同市が開いた健康教室に参加した小賀坂守男(87)は退職後、体力維持のために70歳から本格的に運動に取り組み始めた。今では生きがいの一つになっており「健康の秘訣(ひけつ)だよ」と頬を緩める。

 同市は2011年、健康を基軸としたまちづくりを目指して「健幸都市」を宣言した。教室のほか、集会所などで住民が週2回運動に取り組む「元気づくり会」などを催し、住民が体を動かせる機会をつくる。市の担当者は「元気づくり会が長く続くなど、運動の習慣化ができている。健康増進につなげたい」とする。

 伊達市だけでなく、県内各地で健康づくりの取り組みが活発化する一方、健康指標は改善が進まない。20年度の特定健診でメタボリック症候群に該当した県民の割合は19.3%で、統計の残る08年度以降で過去最悪を更新。県が昨年度まとめた「第2次健康ふくしま21計画」の最終評価では、運動を習慣的に行う人の割合は男性23.1%、女性15.2%で東日本大震災前の09年度よりも増えたが、男性31.0%、女性26.0%の目標値には届かなかった。

 大人だけではない。文部科学省の21年度学校保健統計調査によると、肥満傾向がある本県の子どもの出現率が5~17歳の全年齢で全国平均を上回り、最も高い11歳は全国平均(10.98%)を大きく上回る17.19%に達した。県は震災後の生活習慣の変化が要因の一つとみており、震災から12年が過ぎた今も「健康の復興」には程遠いのが現状だ。

 県によると、身体活動や運動量の多い人は、少ない人と比べて循環器疾患やがんなどの罹患(りかん)、発症リスクが低いことが報告されており、習慣的な運動は精神面や生活の質の改善にも効果が期待されるという。福島医大公衆衛生学講座教授の安村誠司(64)は「健康寿命の延伸に向けては高齢者の健康づくりも大切だが、若者にも関心を持ってもらい、若いうちから運動などに取り組んでもらうことが重要だ」と話す。世代を超えて、楽しみながら行える健康づくりの取り組みが求められている。(文中敬称略)

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 健康寿命 介護を受けたり寝たきりになったりせずに日常生活を送れる期間。厚生労働省が3年ごとに数値を発表している。2019年は本県の男性が72.28歳(全国平均72.68歳)で全国35位、女性は75.37歳(同75.38歳)で同30位だった。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故前の10年は男性が69.97歳、女性が74.09歳だった。19年に都道府県別で最長だったのは、男性が大分県の73.72歳、女性は三重県の77.58歳。