【まち中華物語】中国四川料理清華・塙町 古里に本格派の味を

 
店を切り盛りする店主の大野清美さん(右)、智子さん夫婦(石井裕貴撮影)

 「本気で自分の店を持ちたいなら、こっちで挑戦してみないか」。父からそう後押しされ、古里に構えた店だ。オープンから約26年がたち、店主の大野清美さん(63)、智子(さとこ)さん(60)夫婦で切り盛りする店は、地域の人気店となった。

 地元に戻る決断

 地元に戻って独立するか、このまま都内や誘いのあった海外などで働くか。清美さんは悩み抜いた末に決断して店を開いた。長男と長女を含めて家族4人で古里に移り住み、JR磐城塙駅近くの塙町中心部で一から歴史を築いてきた。

 「開店した頃、中華料理は『油っぽい』というイメージを持たれていた。そうじゃないと分かってもらうまでに時間がかかったよ」。今となっては笑い飛ばす話だが、口コミで店の評判が広まるまでには多くの時間を要した。

 定期的に一般の人向けに料理教室を開くなどして、店の味を広めて知名度を上げる努力も惜しまずに取り組んだ。その結果、今では看板メニューのおこげ料理をはじめ、マーボー豆腐やホイコーローなどを目当てに足を運ぶ客でいつもにぎわう。

 清美さんの専門は四川料理だ。「日本の四川料理の父」と言われる故陳建民さんの一番弟子である故久田大吉さんに師事。東京・世田谷にあった中華料理店「吉華」で徹底的に基礎を学び、約10年にわたり料理長も務めた。

 ほかにも銀座や青山、原宿など都内の中華料理店で働き、腕を磨いてきた。当時は「見て覚えろ」という時代。先輩が直接指導してくれることは少なく、お客さんに提供した料理を片付ける際に、皿に残っている料理を味見して味を覚えたという。

 「習ってきた味をそのまま出したい」。そう話す清美さんからはこれまで培ってきた経験への自負がのぞく。自分で考えたメニューを提供し、本格的な味を楽しんでもらいたいとの思いは強い。

 人気を集めるおこげ料理には、その心意気が詰まっている。おこげは、ご飯を中華鍋に薄く延ばして弱火で1時間ほど焼いた後、2カ月ほど乾燥させて作っている。手間暇は惜しまない。

 「五目おこげ」はエビやイカなどの魚介類や、季節の野菜などが入った熱々のあんを客の目の前でかけ、「ジュー」という音で演出、酸味もあるあんで味わってもらう。視覚でも楽しませる中華料理に魅力を感じ、料理人を志した頃の思いが詰まった逸品だ。

 好みに合わせて

 来店客の様子を見て、料理への細かな味付けを変える工夫も忘れていない。辛口が好みの常連客には香辛料の量を増やしたり、辛いのが苦手な女性には控えめにしたりしている。ずっと続けている客への心配りだ。

 「私の料理を一人でも多く食べてもらって、自分の生きた証しを出していきたい」と話す清美さん。体が続く限り大好きな厨房(ちゅうぼう)に立ち続け、智子さんと一緒に古里の客に尽くすつもりだ。(横田惇弥)

お店データ

清華の地図

【住所】塙町塙字材木町92の1

【電話】0247・43・4020

【営業時間】午前11時30分~午後1時30分、午後5時~同8時30分(平日)午前11時30分~午後1時30分、午後5時~同8時(土、日曜日)

【定休日】月曜日、第4火曜日

【主なメニュー】
 ▽マーボー豆腐=1500円
 ▽五目おこげ=2300円
 ▽牛肉とピーマンの炒め=1650円
 ▽鶏肉とカシューナッツの炒め=1450円
 ▽エビのチリソース=1650円
 ▽八宝菜=1450円
 ▽カニチャーハン=900円
 ▽杏仁(あんにん)豆腐=450円
 ▽蒸しパン(4個)=850円
 ▽コース料理=3300円~(要予約)
※混雑時は、注文品が前後する場合がある。

【店主メモ】清美さんの趣味はゴルフ。12年前にはホールインワンを達成したこともある。智子さんは孫の楓雅(ふうが)ちゃん(1)と遊ぶのが日々の楽しみ。電車好きな楓雅ちゃんが遊びに来た時は、一緒に水郡線を眺めているという。

五目おこげやマーボー豆腐、杏仁豆腐人気メニューの「五目おこげ」(手前)とマーボー豆腐(奥右)、杏仁豆腐

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 NHKラジオ第1「こでらんに5 next」で毎週木曜に連携企画

 まち中華物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『こでらんに5 next』(休止の場合あり)のコーナー「ふくしま見聞録」で紹介される予定です。