【TRY・地ビール造り(下)】ひと味違う!ホップの強い香り

 
簡単そうに見えて何度も失敗した瓶詰め作業。ようやくビールが完成だ

 コメ農家での地ビール造りトライもいよいよ大詰めだ。タンクで2週間の発酵を終え、ビールは完成した。残す作業は瓶詰めのみ。一番の楽しみは何と言ってもビールの出来栄え。足取り軽く福島市大笹生のビール工房「イエロービアーワークス」に向かった。(報道部・小磯佑輔)

 店に着くと車が駐車場を埋め尽くしていた。ビールを買うために並んでいる人も。「良いところに来た、瓶詰め手伝って!」。社長の加藤晃司さん(41)と専務の絵美さん(39)夫妻が出迎えてくれた。

 開店から約1カ月。販売は好調という。開店前にはコメ農家として稲刈り作業もあり、繁忙期を迎えていた。これは「猫の手」でも貸さなければ。早速、説明を受けて瓶詰め作業を始めた。

 瓶詰めのポイントは「酸素に触れさせない」こと。酸素に触れると味や香りが劣化するという。炭酸ガスで瓶の中の空気を追い出し、外気が入らないよう特殊な栓で密閉する。

 栓に付いたチューブから瓶の中の炭酸ガスを抜くと、圧力が下がり、もう1本のチューブを通ってビールが注ぎ込まれる仕組みだ。原理は理解できた。

 ところがやってみると炭酸ガスを扱う怖さもあって動作がぎこちない。ビールの量を調節できずあふれ出してしまう。晃司さんから「仕組みを意識して作業しないといけないよ」と助言をもらう。この言葉が焦る気持ちを落ち着かせてくれた。

 一つの作業を丁寧に確認しながら行うと、きれいに入れる量を調節できた。店頭に立つ加藤さん夫妻の陰で瓶詰め作業をこなした。なんとか「猫の手」になれただろうか。

 ご褒美は製造に携わった待望の出来たてビール。市販のビールとはひと味違う。爽やかなホップの強い香りが鼻いっぱいに広がった。ほかの種類のビールも含めて飲み比べもさせてもらい、飲み口や苦みの違いも楽しませてもらった。

 それにしてもおいしい。おいしさのもう一つの理由は、加藤さん夫妻からもらった「ありがとう」の言葉だろうか。会話とビールを飲む手を止めたくないが、原稿の締め切りもある。お代わりはお預け。身も心も満たされたトライだった。