全女性にパワー与える 朝ドラ「虎に翼」、ジェンダー考証・前川氏

 
朝ドラ「虎に翼」について「社会をちょっと変えていける可能性を秘めた作品」と語る前川氏

 放送中のNHK連続テレビ小説「虎に翼」で、ジェンダー論に詳しい福島大教育推進機構准教授の前川直哉氏が、ジェンダー・セクシュアリティー考証担当として制作に参加している。ドラマは日本で初めて女性として法曹の世界に入った主人公の成長を描いており、前川氏は「社会をちょっと変えていける可能性を秘めた力がある作品」と展望する。

 ドラマの舞台の昭和初期は、女性差別が制度として明文化されていた時代。しかし、主人公の女性は見合い結婚を拒否して弁護士を目指す。モデルは国内初の女性弁護士の一人、三淵嘉子さんで、会津坂下町で疎開を経験した福島県にゆかりのある人物だ。

 前川氏の役割は、当時の状況と脚本のずれの有無を確認することだ。前川氏は「ジェンダー史としてよく練られた脚本で、これまでの放送分では特に指摘する部分がなかった」と明かす。

 作品で主人公は「女性だから」との理由で押しつけられる数々の不条理に「はて?」と疑義を呈して立ち向かう。前川氏は「制度化された女性差別に穴をあけていったパイオニアの女性を描くことで、見る人をエンパワーメントする(力を与える)と同時に、今も多く残る社会的な女性差別問題に気付きを与える」と作品の魅力を挙げる。

 あからさまに描かれる当時の女性差別や、女子トイレ不足問題、ドメスティックバイオレンス(DV)裁判など現代に通じるテーマに対する主人公のせりふは、交流サイト(SNS)で共感を呼んでいる。

 前川氏は「昔の話ではなく、100年後の現在につながっているという気持ちを抱きやすいのでは」とその理由を見る。

 主人公は「言っても無駄」と思えるような場面で「はて?」と問いかける。「この『はて?』で『何か変えられるかもしれない』と見る側に感じさせる」と前川氏。「女性も男性も性別を理由にやりたいことを制限されてはいけない。このドラマは『あなたが本当にやりたいことを目指していい』と呼びかける、ロールモデルになり得るはず」と今後の展開に期待を寄せる。