【働き方変革】トラック運送業、拘束...少しでも短縮 課題多く

 
かご付き台車を活用して荷物を積み込む桜井運送の従業員ら。残業規制の強化で労働時間の短縮に試行錯誤する

 長時間労働を是正する働き方改革関連法施行に伴うトラックやバスなど自動車運転業や建設業、勤務医らの残業規制の強化から、1カ月が過ぎようとしている。常態化していた長時間労働の解消へ前進する一方で、社会活動を維持するため取り組みは始まったばかりだ。県内を取り巻く「2024年問題」の影響や課題、解決策を探る。

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 「始まったばかりで実感はないが、まだ決定的な解決策は見つかっていない」。約80人の従業員を抱える桜井運送(福島市)の桜井誠社長(63)は不安を募らせる。

 規制強化で無制限だった時間外労働の上限が年間960時間までに制限されたトラック運転手。同社では輸送のメインとする生花の出荷が本格化する6~10月が繁忙期だ。全国を駆け回る従業員の拘束時間の長時間化は不可避だったが、少しでも短縮できる働き方を模索している最中という。

 同社では規制強化に備え、昨年から荷役台のパレットやかご付き台車を活用し積み込みや荷降ろしの時間を短縮する実験を行ってきた。2時間かかっていた荷積みが30分で完了するなどの効果が見られており、今後は様子を見ながら本格的に導入する方向性を探る。

 ただ、運送事業者だけでは解決できない課題もある。荷主の都合で運転手が荷積みまで待機する「荷待ち」時間の問題だ。待ち時間も勤務時間として計上される。実際にドライバーが6時間も待たされたこともあるというが、受注への影響を考えると、強くは要望しづらい。荷主に計画策定を義務づける改正関連法は26日に成立したばかりで、桜井社長は「いつまで待てばいいのか分からず、その後の予定が立てられない」と困惑する。

 加えて労働時間の短縮は長距離ドライバー離れに拍車をかける。同社では規制強化による収入減を理由に退職を考える従業員を引き留めている現状だ。桜井社長は「賃金をもっと上げられればいいが、経営を考えるとなかなか厳しい。何とか打開策を見つけたい」と苦しい胸の内を明かした。

 鍵握る運賃値上げ

 人手不足や規制強化の影響で県内の運送業界自体が縮小しつつある。県トラック協会によると、廃業や倒産などで事業を取りやめた会員は昨年度だけで40事業者以上。巨額の赤字を抱える前に手放す業者も多いといい、田母神正広専務理事(62)は「県内の運送業者はほとんどが中小企業。このままでは輸送力低下は避けられない」と危機感を募らせる。

 鍵を握るのは運賃の値上げだ。これまで運送業者は他社との厳しい価格競争に迫られ、低運賃が慣例化していた。同協会によると、会員の6割程度が荷主との交渉に着手しているが、多少の値上げが成立しても近年の物価上昇には追いついていないという。

 協会は「2024年問題」を一つの契機と捉え、今後も運賃交渉への取り組みを続ける。田母神専務理事は「今年1年は正念場。このタイミングを逃さずに、持続可能な運送業のために適正な運賃を社会に求めていく」と切実な現状を訴えていく考えだ。