【県議選・ふくしまの課題】人口減/地域の担い手不足が深刻化

 

 177万1100人(7月1日現在)―。東日本大震災前、200万人を超えていた県内人口は、この12年で20万人以上減った。震災後に加速した人口減は、産業や地域づくりなど多岐にわたる分野で担い手不足を招いている。県は子育て支援や若者の流出防止、移住促進などさまざまな政策を打っているが、何か一つが特効薬となり得るわけではなく、減少には歯止めがかかっていないのが現状だ。

 「(地域の担い手不足は)郡部で深刻さを増し、市部にも広がっている」。長年、会津産落花生の特産化に取り組んできたAPJ(喜多方市)の社長松崎健太郎(47)は警鐘を鳴らす。地域の「ご用聞き」から始めた21歳の創業当時、高齢単身世帯の雪下ろしや病院への送迎、墓掃除などの需要の多さから感じた少子高齢化の波は、四半世紀がたつ今、拍車がかかっている。

 知事の内堀雅雄(59)は就任以降、復興とともに「地方創生」を政策の柱に掲げ、「こども未来局」や「ふくしま12市町村移住支援センター」の新設など対策を講じてきた。ただ昨年の転出超過数は全国3番目の多さになるなど、若年層の「社会減」を中心に厳しい状況は続く。内堀県政と大枠で歩調を合わせてきた県議会からも「(内堀県政誕生から)間もなく9年、目に見える形で成果を出せなければ、県民の納得を得られない」と危機感が漏れる。

 「ここにしかない資源を生かした独自性と、その取り組みの継続が大切だ」。県町村会副会長を務める昭和村長舟木幸一(67)はこう指摘する。村は県内でも高齢化率が高い一方、「奥会津昭和からむし織」の後継者を育成する体験生事業を30年、カスミソウ栽培の新規就農者募集を20年続けてきた。村によると、両事業で移住した人やその子どもの数は現在、村人口の1割強に上り、2020年の国勢調査では5年前の前回調査から12%の「社会増」が見られた。

 県内の移住者や新規就農者は近年、最多を更新し続け、移住して地域活性化を担う地域おこし協力隊の隊員数も全国3位に上るなど明るい兆しはある。「独自性」と「継続」でこれをいかに定着につなげられるか。人口減の波をとどめる一つの鍵になり得る。(文中敬称略)

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 県内人口 1998年の約214万人をピークに減少が続き、特に震災後は5年半に10万人のペースで減っている。このまま進めば2040年に143万人、60年には100万人にまで減ると推計されるが、県は「30年に社会動態ゼロ」、「40年に希望出生率2.11」などの目標を立てて死亡者数が出生者数を上回る自然減、転入者数が転出者数を下回る社会減をそれぞれ抑制する対策を進め、40年に153万人程度を維持することを目指している。