【県議選・ふくしまの今(下)】投票率低迷、危機感抱く若者たち

 

 福島県議選唯一の日曜日となった5日、曇り空が広がった昼下がりの県都に、オレンジ色の法被に身を包んだ若者の姿があった。「投票日は12日です。期日前投票もご利用ください」。県選管が本年度導入した選挙啓発サポーターで、福島大行政政策学類3年の武藤昌大さん(21)は啓発グッズを手に、JR福島駅東口前の通行人に呼びかけた。

 サポーター制度は県選管が17~29歳の若者を対象に導入し、5日現在、36人が登録する。導入の背景には、著しく低迷する若年層の投票率がある。2019年の前回県議選の10代の投票率は25・89%、20代はさらに低い20・12%で、4~5人に1人しか投票していないのが実態だ。

 若者の政治への関心の低下は全国的な課題だ。「政治を『自分ごと』と思っている人が少なく、政治について話すきっかけもない」。武藤さんは、政治が若者にとって身近な存在になっていないことが要因と指摘する。

 サポーター制度には、同世代の若者が広告塔となることで、一人でも多くの若者に県づくりを「自分ごと」として捉えてもらう狙いもある。「制度が不要になれば、真に若者の政治参加が実現したと言えるのでしょうね」。武藤さんの言葉からは若年層の政治への無関心に対する悲壮感すら漂う。

 ■SNSを活用

 サポーター制度に16人が登録する郡山市のケイセンビジネス公務員カレッジでは10月下旬、交流サイト(SNS)で投票日までの日数を知らせるための撮影が行われた。「選挙に行く同世代の人が少しでも増えるよう活動したい」。行政マネジメント学科1年の内田里奈さん(19)は、日数が記されたボードを手に、責任感を口にした。

 ただ、若者の投票率が上がらないことに危機感を抱く学生もいる。同学科1年の鈴木浩太さん(18)は、若者が投票しないことで、施策に若者の意見が反映されないのではないかとの懸念を抱いてきた。「それってどうなのか。自分たちこそ行動しないといけない」

 ■企業でも啓発

 県議選の投票率は12回連続で前回を下回る右肩下がりの状況が続いており、前回は41・68%にとどまった。県選管は企業版のサポーター制度も併せて設け、個人サポーターとの両輪で選挙啓発を展開している。

 各企業などでは若手従業員を中心に、主権者としての自覚を促す取り組みが進む。定数10に対して県内最多13人が立候補したいわき市にあるクレハいわき事業所では、1日に2、3回、放送で投票日を知らせ、社員の約半数が利用する社員食堂ではポスターで周知する。同社の担当者は「候補者が掲げる公約への期待や願いを込める行動だ」と投票の意義を語った。