【子育て応援隊】子どもの食事の悩み 頑張らない選択肢必要

 
本田よう一さん

 野菜が嫌い、小食、作っても食べてくれない...。親にとって、子どもの食事に関する悩みは尽きません。今回は、子育て中の料理家本田よう一さんと、食育・学校給食に携わっている管理栄養士で桜の聖母短大教授の土屋久美さんに、子どもの食の悩みに対するアドバイスや食事作りのヒントを聞きました。電子レンジを使って簡単にできるレシピも紹介します。

 料理家(泉崎村出身) 本田よう一さん

 食べさせようと思うのをやめる

 雑誌やテレビで活躍している泉崎村出身の料理家本田よう一さん(40)は、5歳と1歳の子育て中です。食のプロなら子どもの食事作りは楽々、子どもが「食べない」という悩みとは無縁では? しかし本田さんからは「(長男は)想定よりも食べませんでした。現在進行形でぜんぜん食べません。偏食ではありませんが、初めて見た物は食べないです」と、意外な答えが。

 本田さんは「まあ、このぐらいしか食べないよね」と、特に驚きを見せません。家事や育児をする機会が多く、その中での触れ合いを通してわが子の個性をよく分かっているためです。「でも、おいしくなさそうに食べられると腹は立ちます(笑)」。子どもが食べないからといって、食卓に出さないわけではありません。「(出されたものを)目では食べているんです。口に入らないだけ。繰り返すうちに食べられるようになったらいいなと思います。お供え物だと思って、少量を出すなど工夫するといいですよ」と話します。

 野菜など栄養豊かな食材を子どもが食べないときはどうしているのでしょうか。本田さんは「まず、食べさせようと思うのをやめます。それを食べなくても死にませんし、いつかは食べるようになる」と、気持ちを切り替えるそう。親が「こうしなくてはいけない」という呪縛から逃れ「頑張らないとできないことは、やらない」という選択肢を持つことの大切さを指摘します。ジャガイモはポテトサラダにすると食べず揚げると食べる、卵はゆで卵は駄目だけど卵焼きはOKなど、作り方を変えると食べられる場合もあります。

 総菜や冷凍食品使っていい

本田さん宅のある日の夕食

写真=(上)本田さん宅のある日の夕食。メニューはシューマイとチキンスペアリブのグリル、かぼちゃと里芋の蒸し物。子どもメニューはSNSに掲載することもあります(下)子どもの希望でファストフードの日もあります(写真はいずれも本田さん提供)

ファストフードの日

 自身は、週の前半は子どもが残す可能性大の「挑戦メニュー」、疲れが出てくる週の後半は「楽勝メニュー」を設定。ファストフードや外食でもいい日、金曜は作り置きのカレーを出す、などと決めておくと、考えることが減って楽になるとも。さらに、子どもが大抵食べる「お守り」のような食べ物(チーズやミカン、スティックパンなど)を備えておくことを提案します。「子どもが無理せず食べ、親の機嫌がいい方がいい。子どもに食べさせることも大切だけど、親は自分の機嫌も取ることを忘れないでください」

 親子料理教室で講師をする際は「ごはんを毎日作っている人、お疲れさまです。偉いです!」と、親たちに呼びかけます。「育児が大変と思うのは、子どもを大切に思っている証拠。総菜や冷凍食品なども使い、自分の料理だけで解決させないようにしましょう。頑張るために余裕を持つことが大切です」

 ほんだ・よういち 泉崎村出身。白河旭高卒業後、専門学校で栄養を学ぶ。2006年から料理家として活動。県男女共生課が運営しているサイト「カジダン」では手軽に作れるレシピのコーナーを担当している。

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 一緒に料理してみよう

 桜の聖母短大食物栄養専攻教授 土屋久美さん

 給食管理、食育が専門で、管理栄養士・栄養教諭として県内の小中学校でも指導に当たってきた、桜の聖母短大食物栄養専攻教授の土屋久美さんに、多くの保護者が抱える「食事の悩み」に答えてもらい、下の表にまとめました。

 野菜が嫌いな子どもについて、土屋さんは「においや味に敏感な子でも、中学生くらいになれば自然と食べるようになるので心配いりません」とキッパリ。「食事は生活の一部です。食事作りは親の役割だと切り離すのではなく、子どもに手伝わせたり、調理の過程を見せたり、田畑を見た時に食事と結び付けて食材を教えるなど、"生活の一部"として一緒にやってみて。食に興味を持ち、食べるようになる子が多くいます」とアドバイスします。

食事の悩み

 レンジで簡単!三つのレシピ

 電子レンジを使って簡単に作れる三つのレシピを教えてもらいました。土屋さんに聞いた「豚しゃぶサラダ」「そぼろどんぶり」は、包丁や鍋を使わないので、洗い物も少なく済みます。

 土屋さんのゼミに所属する佐藤璃帆さん(2年)が考案した「野菜のキッシュ」は、中学生になるまでほとんどの野菜が食べられなかったという佐藤さんが「野菜が苦手な子でも食べられるように」と工夫したメニューです。 

 私も食べられなかった

 「野菜のキッシュ」考案 佐藤璃帆(りほ)さん

 「野菜のキッシュ」を考案した佐藤璃帆さんは、小さな頃は野菜をほとんど食べられませんでしたが、中学生になると「いつの間にか食べられるようになった」と言います。

 小学校の時は、給食の時間が何よりつらかったそうです。枝豆とコーン、カボチャ以外の野菜はどれもにおいが苦手で食べられませんでした。「せめて半分は食べよう」と教師に言われ、クラスメートのほとんどが食べ終わっても、皿に残った野菜と格闘していました。家では、母親が野菜を何とか食べさせようと、スープに入れたり、好きな肉料理に加えたりと、工夫して食事を作ってくれるものの、どうしても食べられませんでした。「せっかく作ってくれたのに、申し訳ないと思っていた。親もつらかったと思う」と振り返ります。

 しかし中学で運動部に入ると、おなかがすいて「野菜は好きじゃないけど食べよう」と思えるようになりました。食事が体を作ると知り、栄養を考えて食べるようにもなりました。今ではトマトやピーマンが大好きです。

 佐藤さんは、この経験がきっかけで「食」に興味を持ち、短大で栄養士と栄養教諭の資格取得を目指し勉強しています。「私と同じように偏食・小食の子どもの気持ちを理解しながら、おいしい給食を作る仕事に就きたい。今では当時の母の大変さが分かり、感謝しています」

時短レシピ