【5月8日付社説】熱中症対策/自然災害と認識し命守ろう

 

 早い段階で気付き、適切に処置すれば重症化は避けられる。症状や対処法を理解し、自分や家族らの命を守ることが大切だ。

 初夏を迎え、気温の上昇する日が増えてきた。大型連休中も県内各地で真夏日を記録し、熱中症で病院に搬送される人もいた。

 県によると、昨年、県内で熱中症の疑いで搬送された人は1840人に上り、統計が残っている2008年以降で最多だった。約7割は軽症で済んだものの、37人は重症となり、4人が亡くなった。

 体が暑さに慣れていないこの時期は、熱中症のリスクが高まる。目まいや立ちくらみ、筋肉痛などがあれば涼しい場所で横になり、水分や塩分を補給するなど、早めの対処を心がけることが重要だ。

 気象庁は今夏について、エルニーニョ現象などの影響で全国的に気温が上昇し、猛暑日が増えると予想している。夏本番に向け、ウオーキングなど軽めの運動で汗をかくことを習慣づけるのも予防になる。今から体を暑さに慣れさせる取り組みを進めていきたい。

 今年から気温と湿度などから算出する指標「暑さ指数」が都道府県内の全地点で35以上になると予想される場合、「熱中症特別警戒アラート」が発令される。

 近年は過去に例のない厳しい暑さに見舞われている。異次元の暑さはもはや自然災害であり、命を守るための取り組みが不可欠だ。猛暑日が予想される日は不要不急の外出を控えるなど、安全を最優先にした行動が求められる。

 県内の熱中症搬送者の約6割は高齢者だ。年齢を重ねると、体温の調節機能がうまく働かなくなり自覚するのが遅れがちだ。気付いた時には深刻な症状に陥っている可能性もある。自力で水を飲むことができない場合などは救急車を呼ぶなどして、すぐに医療機関で治療を受けてほしい。

 発生場所の約半数は室内だ。強い日差しを浴びなくとも、高い湿度などで体内に熱がたまると発症リスクが高まる。室内の温度や湿度を小まめに確認し、エアコンなどで適温を保つ必要がある。

 例年7月ごろになると「暑くなったのでエアコンを動かしてみたら故障していた」など、修理や買い替えの依頼が相次ぐという。しかし繁忙期で業者が対応できず、数週間待たされる場合がある。早めに試運転を行い、正常に作動するか確認しておくことが大切だ。

 窓にブラインドやすだれを設置したり、ゴーヤや朝顔などの植物で緑のカーテンをつくったりして、強い直射日光で室温を上昇させない対策も早めに施したい。