【5月9日付社説】みんゆう県民大賞/地域照らす営みたたえたい

 

 県内から大きく飛躍していく姿、地域に新たな人が根を下ろすことにつながる営みは、それぞれ本県にとって明るい光だ。

 県内で大きな功績を残した個人や団体を顕彰する第34回みんゆう県民大賞(福島民友新聞社主催)の受賞者が決まった。

 芸術文化賞に選ばれた会津大宇宙研究チームは、小惑星探査機「はやぶさ」をはじめとする宇宙航空研究開発機構(JAXA)のプロジェクトに参画している。初めて月面着陸を成功させた探査機「SLIM(スリム)」では、大竹真紀子教授(惑星科学)が、機体に搭載した特殊カメラの運用、観測に有望な着陸場所の検討などで貢献した。

 会津大が実績を積み重ねるなかで、宇宙開発に本県企業の技術や部材が採用される流れが生まれている。本県で学び、働くことが宇宙の神秘を解き明かすのにつながっているのは、子どもたちに大きな夢を与え、進路選択に幅を与えるものだろう。今後も宇宙と本県を結びつける中心的な役割を果たし続けてほしい。

 スポーツ賞には、プロゴルファー蛭田みな美さん(鮫川村出身、学法石川高卒)が選ばれた。昨年のCATレディースで、県勢として9年ぶりの女子プロツアー優勝を果たした。プロ9年目の今季はパナソニック・オープンで2位、富士フイルム・スタジオアリスで3位となるなど、充実ぶりが目立っている。

 活躍の原動力となっているのは、ジュニア時代から成長を見守ってくれた地元への感謝の思いだ。「良い結果を報告して地元に元気を届け、地域の活性化につなげていけたらうれしい」と話している。昨年に続く優勝を共に喜び合えるよう、本県から熱い声援を送りたい。

 ふるさと創生賞は、昭和村の伝統工芸品の継承事業「からむし織姫」の体験生に決まった。事業は1994年に始まり、今年で31年となる。これまで受け入れた体験生は130人で、30人超が村に定住している。3月に開かれた30周年を記念した展示会には歴代体験生のうち、村を離れた人を含め70人が作品を寄せるなど、関係人口の拡大の効果もある。

 伝統を受け継いでいくことに加えて、移住者を持続的に生み出すことに成功している。人口減少や高齢化が全国的な課題となるなか、この先進的な取り組みが30年超続いているのは、村民と体験生が互いに支え合ってきたからにほかなるまい。体験生を温かく迎えてきた村民にも敬意を表したい。