福島県産米は世界一 米国に独自輸出「品質、おいしさ知って」

 
さらなる県産米の輸出を目指し、生産農家と意見を交わす田牧さん

 コメの生産や流通などを手がけるライスコンサルタントの田牧一郎さん(71)=郡山市出身、茨城県在住=は、独自のルートで福島県産米の海外輸出に取り組んでいる。約40年前から海外でコメの流通に携わり、本県産米の品質の高さを実感した田牧さんは「世界一おいしい米」をキャッチフレーズに、県産米の流通拡大に挑んでいる。

 「やっと県産米の輸出活動の一歩を踏み出せた。県産米のおいしさを多くの人に知ってもらいたい」。田牧さんは2月上旬、会津産コシヒカリ900袋(計約1.8トン)を米カリフォルニア州に初めて輸出した。県産米の輸出を巡る苦難の歴史を知るからこそ、感慨深いものがあった。

 田牧さんは郡山市でコメ栽培に携わった後、1980年代から米国で精米会社を始め、カリフォルニア米を使って「田牧米」と名付けたブランドを確立した。その後は中東や欧州などでも田牧米を流通させ、世界のコメ事情を知る存在となったが、故郷への思いを忘れることはなかった。

 「福島や日本のコメはもっとうまい。米国でも通用する」。海外の評価を実感し、県産米の輸出への手応えをつかみかけていた時、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故が起きた。県産米の輸入が規制され、長く米国の輸入禁止リストに「福島県産米」が残り、もどかしい日々が続いた。

 それでも「福島のコメは安全でおいしい」と信じ、規制撤廃を待ち続けた。2021年に規制が撤廃されるとすぐに動いた。当初は日本政府から支援を受けることを計画していたが、そのために必要な組織づくりに時間がかかることが判明。「一刻も早く米国にコメを届けたい」。支援を受けることを断念し、これまでに培った輸出や流通に関するノウハウを生かし、独自ルートで輸出した。

 県産米の輸出は4月にも第2弾として行う見通しだ。会津産コシヒカリの輸出を計画している。今は個人消費用米を輸出しているが、いずれは業務用米も広め、県産米を含む国内米の評価を高めていくことが目標だ。

 「海外でコメが高く売れれば営農者の意欲向上にもつながる。会津産コシヒカリのおいしさが伝われば、今後は別の品種も売れるはず。そのための仕掛けをつくっていく」。実現に向け、田牧さんは走り続ける(千葉あすか)

 海外販路拡大へ

 県産米の海外輸出を巡っては近年、販路拡大に向けた動きが進む。東京電力福島第1原発事故による米国の輸入規制は2021年9月に撤廃され、米国には21年度は約2.2トン、22年度は約27トンが輸出された。

 欧州連合(EU)も23年8月、日本産品に課してきた輸入規制を撤廃した。県は今年2月、県産品の海外販路拡大を目指し、国内や米国、東南アジアなどで量販店を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)と連携協定を結んだ。