【参院選・女性の視点】医療・福祉 相双地区、進む担い手不足

 

 厚生労働省が「医師少数県」に位置付ける本県の中でも、震災で甚大な被害の出た相双地区の状況は特に深刻だ。1992(平成4)年から看護師として南相馬市の医療現場を見続けてきた小野田克子さん(50)は「震災後の非日常に慣れてしまった。もう昔に戻れるとは思えない」とため息をつく。

 県内病院の常勤医師数は震災前から214人増の2233人(4月1日現在)、看護師は328人増の1万4884人(昨年12月1日現在)となった。一方、相双地区では医師が35人減り85人、看護師は446人減の742人。南相馬市の高齢化率は原発事故前の25.9%から3493%(7月1日現在)に跳ね上がり、在宅診療や介護など医療・福祉のニーズが細分化しているものの、担い手不足が慢性化している。

 県は、医師と看護師が県内の公的医療機関に一定期間勤務すると奨学金の返済が免除される支援制度の創設や、福島医大の医師の採用枠を増やす取り組みを進める。ただ医師、看護師の育成には時間がかかる中、人材確保は医療機関に委ねられているのが現状だ。「南相馬市は原発事故で人口減少、医師不足などの問題が全国より10年は早く表面化した。自助努力では、もうどうにもならない」

 小野田さんは看護師と育児を両立した経験から「家事や育児など、女性が生活の中で求められる役割は男性より多い」と話す。地域の医療・福祉の問題がより深刻化すれば、家庭の介護などで女性が果たす役割はさらに増えると感じている。だからこそ「生活の中の問題は女性の方が実感しやすいはず。今の社会が続けばどうなるか、女性候補者には、その視点を忘れてほしくない」と訴える。