【18歳選挙権・主権者教育の今】生徒にどう教えるか 時間に制約「手探り」

 
18歳選挙権導入を見据えて作製された副教材と指導資料。内容は多岐にわたり、現場は要点を絞る必要性に迫られている

 「全てを網羅して教えるのは無理。かなり要点を絞らないと」。選挙権年齢の「18歳以上」への引き下げを受けて導入される高校生向けの副教材をめぐり、福島市で今月上旬に開かれた教員研修は議論が白熱。実のある主権者教育を行うために副教材をどう使い、教える時間をどう確保するか。予定時刻をオーバーして終了した研修からの帰途、福島商高の渡部純教諭(42)はあらゆる面で「壁」の高さを感じていた。

 総務省と文部科学省が作製、配布した副教材は全104ページ。模擬選挙やディベート(討論)の仕方を紹介するなど内容は多岐にわたるが、受験や就職に備えて間もなく自宅学習に入る今春の卒業生については、配布するだけになるケースも多い。センター試験直後の今月中旬、同市中心部の公共施設内にある学習スペースで2次試験の問題集に向かっていた鈴木桜さん(18)=橘高3年=は冬休み前に副教材を受け取った。「小論文に備えて一度読んでみたけど、正直今は、自分が投票に行くという実感があまりない」。有権者になる戸惑いを隠せない様子で、再び問題集に目を戻した。

 ほとんどの高校は、副教材を本格的に使用する新年度に向け、年間指導計画づくりを進めている。副教材による指導に何時間を充てるかなどは各校の裁量に任されるが、今の高校生は多忙だ。渡部教諭は「これまで通り、教えなければならない授業がある中で、(副教材にある)政策論争や模擬選挙、模擬議会などにどれだけ時間を割けるか」と困惑する。生徒が自発的に課題学習を行う「総合的な学習の時間」を設けてはいるものの、福島商高の場合は既に商業科目の課題研究に充てられ「検定試験や部活の大会、学校行事なども考えれば、十分な時間を確保して年間計画を立てるのは至難」(渡部教諭)だ。

 教員研修で説明に当たった県教委の担当者は「副教材で実践的な主権者教育として紹介されているディベートは、どの教科の授業でも、学校生活の中でも実践する機会がたくさんある」と教科の枠を超えて学校全体で取り組む必要性を強調した。渡部教諭も「学校にいる大人全員が温度差なく高い意識を持つことが不可欠」と感じているものの、本音も打ち明ける。「要点をどう精査するかなど、社会科の教員でも難しい。実現できるかどうかは手探り状態だ」

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