「市民生活」向上に重点 郡山市長選、公約の差別化など躍起

 
郡山市長選で品川、浜津の両候補は子育て支援などを重点公約に掲げた。有権者の関心を高めることが焦点となる

 任期満了に伴い16日に投開票される郡山市長選は、再選を目指す現職の品川萬里(72)=1期=と、新人で前市議の浜津和子(63)がしのぎを削る。両候補とも、子育て支援や中心市街地の活性化などを重点公約に掲げ、支持を訴える。

 11日午後、両陣営は雨の中で選挙カーを走らせ、候補者名を連呼した。選挙戦は明確な争点がないまま中盤に差し掛かり、掲示板でポスターに目をやる市民の姿はまばらだ。

 一方、両陣営は公約の浸透や差別化に躍起だ。有権者のわずかな反応にも神経をとがらせる。震災後の対応を巡る復興施策が争点だった4年前とは様変わりし、両陣営はより豊かな市民生活の実現を強調する。

 品川は「市民総活躍」を前面に、個人演説会などで保育料の軽減を強調する。公約には子育て世代を意識し、学校への高速通信網導入など教育環境改革も盛り込んだ。選対本部長の深谷昇(72)は「若い人への関心も広げたい」と話す。

 一方、浜津は街頭演説などで小中学生の給食費無料化を訴える。意識するのは女性の共感と関心で「女子力で郡山を変える」と連呼している。選対本部長高橋隆夫(77)は「市政のイノベーション(革新)を目指す」と意気込む。

 政党間の思惑も交錯

 品川萬里(72)と浜津和子(63)の熱を帯びる演説とは裏腹に、中盤戦に差し掛かっても有権者の反応はいまひとつだ。派遣社員の女性(31)は「候補者の訴えはあまり聞こえてこない」と感じている。

 女性は自営業の男性と結婚後、男の子2人を産み、子育て政策に関心を持つようになった。「子どもは遊び盛り。家の近くに公園が欲しい」と楽しく子育てできる環境整備を期待する。

 両候補とも子育て支援を強調するが、女性は公約に関する情報の少なさも指摘する。2人の政策を見極めた上で、大事な1票を「実行力のありそうな人」に投じる考えだ。

 有権者や陣営の思いはさまざまだが、政党間の思惑も交錯している。自民党はどちらの候補への推薦も見送り、民進、公明、社民の各党は自主投票を決めた。ただ民進党は支持母体の連合福島が品川を推薦しているため、実質的に品川支持の状況だ。共産党は基本政策が一致したとして浜津の支持に回っている。

 品川の出陣式で、郡山市選出の自民党県連副会長の県議・佐藤憲保(62)が支援を強調する一方で、浜津の出陣式には応援のマイクを握る同市選出の自民党県議・長尾トモ子(68)の姿があった。自民党関係者は「構図が複雑だ。支援の動向も見えにくい」とぼやく。

 浜津を擁立したのは自民系の市議会最大会派「創風会」だが、一部議員が支援を明確にせず、一枚岩とは言い難い。水面下で支持基盤が複雑に絡み合う情勢に、ある陣営の選対からは、選挙後の政党内や支援団体とのしこりを懸念する声もある。(文中敬称略)