90歳騎馬武者、野馬追再び出陣! 南相馬市の西さん、3世代で

 
手作りの陣羽織を手に取り「再び3世代で野馬追に出場できるのがうれしい」と声を弾ませる西さん

 5月に変更となった相双地方の伝統行事「相馬野馬追」の開催まで1カ月を切った。南相馬市原町区の西護さん(90)は高齢などにより2年前から出場を見送ってきたが、涼しい時期の開催や卒寿の節目を理由に家族の応援を受け、3世代での出陣を果たす。一般社団法人相馬野馬追によると、90代での出場は過去に例がなく、最高齢記録を更新するとみられる。西さんは「野馬追があったから90歳まで生きてこられた。再び3世代で出場できてうれしい」と声を弾ませる。

 「生きがい気持ちが湧く」

 「野馬追は生きがい。馬に乗って支度し(主会場の)雲雀ケ原に向かうと気持ちが湧き上がってくる」。15歳から野馬追に参加した西さんは、自宅で馬を飼育し、甲冑(かっちゅう)や馬具、陣羽織も自分で作り、毎年7月を楽しみに迎えてきた。孫の駿斗さん(25)が小学生になってからは、長男の勝正さん(63)と3世代で出場を重ねてきたが、西さんは2年前、高齢などを理由に引退した。

240426news7042jpg.jpg※写真=3世代で初めて野馬追に出場した(右から)西さん、孫の駿斗さん、長男の勝正さん=2005年

 涼しさ後押し

 一度はやめたはずだったが、家族が西さんの再出場を後押しした。猛暑により体への負担が大きかった7月から開催時期が変わったことで、駿斗さんは「90歳という節目に加え、5月は涼しいので、安心感があった」と胸の内を口にする。

 87歳まで出場を続けた西さんの背中を追ってきたからこそ、駿斗さんは「じいちゃんは大きな存在でレジェンド(伝説)。もう一度3世代で出て、じいちゃん孝行がしたい」と話す。

 駿斗さんの母久美子さん(56)も「5月は暑くなく(気温が)ちょうどいい時期」と出場を促し、西さんも「薦められたら(出るしかない)」と決断した。

 今年の相馬野馬追は5月25~27日に行われる。西さんは25、26の両日の行列に参加する予定だ。これまでに70回以上出場し、何度も開催日程の変更を経験してきた西さんにとっても5月の出場は初めて。西さんは「実感がまだ湧かない」としつつも「野馬追には侍として出ている。暑さとか、雨とかは勘定していない」と人一倍の勇ましさで奮い立っている。(佐藤健太)

 昨年上回る387騎に

 今年は昨年(361騎)を26騎上回る387騎が出場する見通しだ。観光客の受け入れ準備も着々と進んでおり、一般社団法人相馬野馬追の担当者は「誘客は好調で、日程変更の周知も十分進んでいる」と手応えを語る。指定席が例年より早く売り切れたほか、自由席も昨年以上の売れ行きとなっており、涼しい5月の開催が影響したと分析している。

 当初懸念された行列の人手確保を巡っては、相馬中村神社(相馬市)が人手不足の影響で距離を短くして対応する予定だが、同法人によると、相馬太田、相馬小高両神社(ともに南相馬市)は参加者確保のめどが立ったという。