【福島県知事選・最前線ルポ】中通り 若者の思い...決断に焦点

 

 「就職先として希望している県内の公立保育所は定員が少ない。それに、保育士って仕事が大変な割に給料が安い」。福島市の福島学院大で14日に開かれた学園祭。大学生をターゲットにした県選管の選挙啓発活動も行われ、知事選に関するチラシを受け取った同大3年の関香穂(20)は率直な思いを口にした。

 彼女自身は選挙権を持ってから、欠かさず1票を投じてきた。しかし、一緒にいた同級生の渡辺千咲(21)と遠藤ひかり(20)は「安心して子育てができたり、若者が多くてにぎやかな県になるような政策に取り組んでほしい。でも1票の重みをあまり感じていない」と思わず本音を漏らした。

 告示後初の日曜日となった14日、候補者は郡山市など大票田を中心に舌戦を繰り広げた。若者の「政治離れ」が懸念される中、候補者が復興や将来を担う世代に政策をどうアピールし、若者がどのような判断を下すのかが焦点の一つだ。

 現職の内堀雅雄は待機児童の大半を占める0~2歳児の受け皿確保や保育士の職場環境改善を主張。既存産業の人材確保やICT(情報通信技術)など先端技術を活用した取り組みの支援を掲げ「魅力ある仕事を創り、若者の定着や新たな人の流れを生み出す施策を展開する」と力を込める。

 新人の町田和史は県内全市町村での学校給食費の無料化や教材費の補助などを訴える。若者の将来的な不安を見据えて特別養護老人ホームの待機者解消といった福祉分野も重視し「若者が地域に根を張って暮らし、仕事や子育てができる環境を整えたい。現県政では不十分だ」と指摘する。

 新人の金山屯は東北新幹線などの交通網を活用した首都圏への通学支援、高橋翔は若者が果敢に挑戦できる土壌づくりを提唱する。

 「18歳選挙権」が導入されて初の知事選。昨秋の衆院選での本県の投票率は20代が32.43%、30代が41.75%と低迷したが、18歳は49.97%と若年層の中では比較的高かった。主権者教育に力を入れる安積高御舘校3年の平栗翔太(18)と前田俊彦(18)は「若者の投票率が低いと、高齢者の意見ばかり反映されないか心配だ」と不安を口にする。

 知事選は県民の政治参加を促す機会。「少子化や都市部との格差を改善する政策をお願いしたい」。そんな思いに応えてくれる論戦が展開されているのか、若者たちは候補者の訴えを静かに見つめている。(文中敬称略)