【福島県議選・候補者アンケート】「人口減」施策、20人最重視

 

 12日投開票の県議選を巡り、福島民友新聞社は、無投票当選した17人を含む県議選の立候補者71人を対象に政策などに関するアンケートを行った。特に重視する県政の課題を聞いたところ、県内でも急速に進む「少子高齢化・人口減少対策」が最多の20人に上り、企業誘致などの「産業振興」が14人で続いた。東日本大震災前の2011年に200万人を超えていた県内人口は、この12年間で20万人以上減少した。地域社会や産業を支える担い手の不足などが懸念されており、重要な県政の課題と認識する候補者が多い状況が浮き彫りになった。

 集計結果は〈1〉産業振興〈2〉農林水産業振興〈3〉観光振興〈4〉教育問題〈5〉医療・福祉対策〈6〉景気・雇用対策〈7〉原発問題〈8〉防災対策〈9〉少子高齢化・人口減少対策〈10〉その他―の中から一つを選択してもらった。「少子高齢化・人口減少対策」や「産業振興」は幅広い選挙区の候補者が課題に挙げたが、特に「少子高齢化・人口減少対策」は、課題に直面する会津や1人区の候補者が多い傾向にあった。そのほかの課題では「教育問題」「景気・雇用対策」「防災対策」がそれぞれ8人だった。「教育問題」は教員の多忙化解消、「景気・雇用対策」では県内企業に影響が続いている物価高騰への対応が必要との声があった。「防災対策」は9月の記録的豪雨で甚大な被害のあったいわき市選挙区で「抜本的な防災力強化が必要」など最多の4人が選択した。「医療・福祉対策」に対する関心も高く7人が重視すると回答した。「観光振興」を選択した候補者はいなかった。

 人口減、候補者9割「強い危機感」

 最も多い候補者が重視する県政の課題に挙げた「少子高齢化・人口減少」について、現時点の危機感の度合いを聞いたところ、候補者の約9割となる64人が「強い危機感を抱いている」と回答した。

 「ある程度危機感を抱いている」は6人で、「危機感はない」は1人だけだった。県内は県民の3人に1人が65歳以上の高齢者となっており、19町村では高齢者の割合(高齢化率)が40%を上回るなど少子高齢化とそれに伴う人口減少が急速に進んでいる。候補者からは「担い手が不足し、産業や地域コミュニティーが維持できなくなる」「将来的に財源が減り、行政サービスの維持も難しくなる」など強い懸念の声が上がった。

 対策として必要な施策については「出産・子育て対策」が29人と最多だった。「移住・定住の促進」8人、「雇用の場の確保」と「未婚・晩婚化対策」が7人、「教育環境の整備」5人と続いた。また、「さまざまな施策を複合的に組み合わせて展開すべき」とした候補者も11人いた。

 処理水放出「評価」6割

 県議選に立候補した71人を対象にアンケートで、東京電力福島第1原発事故の処理水海洋放出開始の決定に至る政府や東電の対応について評価を聞いたところ、「評価する」「どちらかというと評価する」との回答が約6割の42人に上った。国際原子力機関(IAEA)が「国際的な安全基準に合致する」との報告書をまとめたことなどを評価する声が多かった一方、政府の関係者への説明不足を指摘する声もあった。

 「評価する」としたのは6人、「どちらかというと評価する」は36人だった。放出決定の手順を評価するとした候補者はIAEAの報告書のほか、風評対策として政府が設置した基金の規模や処理水海洋放出が復興の迅速化につながることなどを挙げた。ただ、評価するとした候補者の多くが放出開始後の風評被害に対する不安は払拭されていないとして、国内外への適正な情報発信の継続などを求めた。

 一方で政府や東電の対応を「評価しない」としたのは3人、「どちらかというと評価しない」は13人だった。評価しないとした候補者は「漁業者や県民の(海洋放出への)理解が進んだとはいえない」「関係者に対するできる限りの説明を尽くしたかは疑問が残る」ことなどを理由とした。7人は海洋放出自体に反対との回答だった。

 課題は「風評被害」半数超

 30年以上続くとされる処理水の海洋放出に関して今後、最も懸念される課題についても聞き、半数を超える47人が「風評被害」と回答した。続いて多かったのは「放出作業や施設のトラブル」と「漁業継続」で各7人だった。

 処理水海洋放出に伴い日本産水産物の禁輸を続ける中国など、処理水に絡めた政治的な動きを懸念する候補者もいた。

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 調査方法 告示前に各立候補者に調査票を配布し、選択方式と記述方式で質問した。立候補した71人全員が回答を寄せた。