処理水海洋放出始まる、東電第1原発 初回は17日間で7800トン

 
処理水の海洋放出が始まった東京電力福島第1原発=24日午後(ドローン撮影・石井裕貴)

 東京電力福島第1原発にたまる処理水の処分を巡り、政府と東電は24日午後1時3分、海への放出を開始した。今後の取り出しが予定される事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)や放射性廃棄物の保管場所の確保など廃炉の進展へ効果が見込まれる一方、約30年と長期に及ぶ放出の影には、風評被害の再燃や万一のトラブルによる不安の拡大といった深刻な懸念がつきまとう。東電は放出開始を控えた22日夜、約1200トンの海水で薄めた約1トンの処理水を、放水設備の「立て坑」の上流水槽に移送。その後、処理水に含まれる放射性物質トリチウムが国の基準の40分の1に当たる1リットル当たり1500ベクレル未満になっているかなどを確認した。

 トリチウム濃度は基準以下

 東電の分析の結果、放出する処理水のトリチウム濃度は同43~63ベクレルで基準を確実に下回っていることを確認。第三者機関の日本原子力研究開発機構(JAEA)の分析でもほぼ同様の値を得た。これらの結果と気象・海象条件を踏まえ、東電は24日朝、放出開始を判断した。

 東電によると、同日午後1時3分、海水を上流水槽に送るための装置を起動。10分後には上流水槽が満杯となり、沖合約1キロへとつながる海底トンネルの起点となる下流水槽に流れ込み、東電が2051年までを見込む海への放出が事実上始まった。作業には国や県のほか、国際原子力機関(IAEA)の担当者も立ち会ったという。

 初回の放出に向けて必要な作業は午後2時33分に終了し、トラブルは確認されていない。東電はこの日、放出に伴う周辺海域の環境変化の有無を確認するためのモニタリング(監視)作業も開始した。原発から半径3キロに設定した10測点で試料となる海水を採取、25日夕にも公表する予定だ。

 初回分は約7800トンで、17日間かけて放出するという。東電の計画では本年度、計4回に分けて約3万1200トンを海に放出する。1日当たりの汚染水発生量を100トンと仮定して換算した場合、本年度は2万1千トンの汚染水が新たに発生する見込みだ。敷地を圧迫し、廃炉作業の支障とされているタンクの減少分は「差し引き10基分程度」(東電担当者)になるという。

 放出を巡っては、当時の菅義偉首相が21年4月、処理水の処分方法を海洋放出と決定。岸田文雄首相が今月22日、全漁連や県漁連の幹部との面会などを踏まえた上で、24日の放出開始を表明していた。ただ、漁業関係者らを中心に放出に伴う新たな風評被害への根強い懸念があるほか、中国など一部の国では放出への反発が強まっている。

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