「戻れぬ前提の議論を」 大熊の永井さん

 
「戻れぬ前提の議論を」 大熊の永井さん

避難先の会津若松市のアパートで、帰ることもままならない自宅の写真を見つめる永井さん

 避難区域の再編で帰還困難区域となった大熊町夫沢の永井文成さん(72)は、所有する山林約1.5ヘクタールが福島第1原発の敷地と地続きになっている。山林の賠償が依然としてめどが立たない状況に「もたもたせずに答えを出してほしい。こんな状況が続くなら、10年たっても結論が出ないんじゃないか」と憤る。

 永井さんが所有する土地は山林だけでなく、約2ヘクタールの田んぼもある。しかし、本来ならば先祖から代々受け継がれていくはずの山、田んぼは今、区域内への立ち入りが制限され、足を運ぶことすら容易ではない。

 古里を遠く離れた会津若松市の借り上げ住宅で生活する永井さん。賠償に限らず、全体的な暮らしの先行きが見通せないことに不満と不安を感じている。

 さらに「原発の汚染水問題などがある以上、どうせ町には帰れない。賠償などは、もう町に戻れないという前提で考えてほしい」と、諦めの表情を見せた。