【富岡・夜の森駐在所ルポ】住民寄り添い安全守る 復興拠点巡回

 
町内を訪問し、住民に「何かあったらすぐに連絡ください」と話す薄井さん(左)と福島さん(右)=富岡町

 富岡町の帰還困難区域内にある双葉署「夜の森駐在所」は、立ち入り規制が1月下旬に緩和されたばかりの特定復興再生拠点区域(復興拠点)の治安を守るパトロール拠点だ。同駐在所を拠点に復興の最前線で汗を流す警察官の一日に密着した。

 「何か困り事はないですか」「イノシシが出てねぇ」。パトロールで立ち寄った町内のバラ園で、双葉署復興支援課の薄井利和さん(53)と福島将太さん(31)は、住民の女性とあいさつを交わす。世間話をする中、女性は「やっぱり空き巣とか心配。近くに駐在所があると安心だよね」と語った。

 薄井さんは須賀川市出身で、震災当時はいわき中央署刑事課で勤務。「相棒」の福島さんは、奈良県警から特別出向している警察官(ウルトラ警察隊)の一人。古里も経歴も違う2人だが、人とのつながりを大事にし、見える形の警察活動をしようと心を一つにしている。

 「『何かあったら自分たちがすぐ駆けつけます』と伝えているんです」と、薄井さん。立ち入りが緩和された復興拠点の面積は約390ヘクタール。居住や宿泊はできないが、出入りは自由だ。地域再生へ期待が高まる一方で、交通量の増加に伴う事故防止や防犯対策の充実が課題となっている。

 活動の柱の一つ、空き家の巡回にも同行した。施錠はされているか、不審者はいないか、窓ガラスなどが割れていないか―。2人は敷地を一周しながら入念に確認し、異常がなければ最後にチェックカードをポストに入れる。「しっかりと守るという気持ち」と語る福島さんの眼光は鋭かった。

 夕刻、日が落ちて辺りが暗くなると、駐在所の明かりが暗闇に浮かぶ。駐車場には警察官が乗ったパトカーが常駐警備しており、赤色灯が回る様子は「見える形」での警戒が続けられていることを示していた。

 住民が古里に帰還することを判断するまでには、さまざまな要素が複雑に入り混じる。ただ、その根底にある地域の安全は、夜の森駐在所のように、常に住民を思う警察官の手で守られている。(報道部・影山琢也)