ベータ線は紙1枚で遮蔽可能 トリチウム

 

 東京電力福島第1原発では、地下水が原子炉建屋に流入し、溶融核燃料(デブリ)に触れるなどして汚染水が発生する。汚染水を多核種除去設備(ALPS)で処理したのが「処理水」と呼ばれる。ただ、放射性物質トリチウムは水と化学的な性質が似ていて取り除くことが難しい。

 トリチウムは「三重水素」と呼ばれる水素の仲間で半減期は12.3年。身の周りに広く存在し、雨水や水道水にも1リットル当たり0.1~1ベクレルが含まれている。トリチウムが出すベータ線は弱く、紙1枚で遮ることができ、外部被ばくはほぼゼロである。人体に入った場合の影響は放射性セシウム137の約700分の1とされる。

 トリチウムは、国内外の原発や再処理施設でも基準を守った上で海洋や大気中などに放出されている。フランスの再処理施設では、第1原発のタンクで保管されているトリチウム総量(780兆ベクレル)の17.5倍程度となる約1京3700兆ベクレル(2015年)が出された。第1原発でも2010(平成22)年には約2.2兆ベクレルが放出されていた。