いち早く営業再開、笑顔が支え 広野、居酒屋を経営・鈴木さん

 
「若者も積極的にまちづくりに参加してほしい」と話す鈴木さん

 全域が緊急時避難準備区域となり、役場機能を1年近く町外に移した広野町。区域が設定されている間も子どもや介護が必要な人らを除き、住民の立ち入りや事業者の営業活動が制限されなかったため、広野町上浅見川の居酒屋「元気百倍」を営む鈴木すみさん(57)は震災と原発事故から約5カ月後の2011(平成23)年8月、町内でもいち早く営業を再開させた。「何としても店を開けて町の再生を進めたかった。当時は無我夢中だった」と振り返る。

 鈴木さんは店の再開から1年ほど、避難先のいわき市の仮設住宅から通って営業を続けた。来店客がいない日もあり、利益はほぼ出なかった。それでも地域住民や原発事故の収束・廃炉作業に当たる作業員らのため、日曜日以外は毎日店を開けた。「開いている店があるのはうれしいね」。客の喜ぶ顔が当時の支えだった。

 現在は地域住民だけでなく、県外からの客も増え、店には震災前のようなにぎわいが戻ってきた。町内には多くの復興関連の作業員が暮らすようになり「良くないイメージを持つ人もいるだろうが、復興に取り組んでくれていることに感謝している。営業を楽しみにしてくれる人たちのおかげで、ここまでやって来られた」と思いを語る。

 生活環境やインフラなどハード面の整備は避難指示が出たほかの地域より進んでいると実感する。だからこそ「これからは町に人を呼び込む取り組みが必要。若い世代も積極的にまちづくりに携わってほしい」と若者の奮起に期待する。