大熊移住、親子で食堂 ほっとできる場所に...復興拠点内初の飲食店
福島県大熊町下野上地区の特定復興再生拠点区域(復興拠点)に7日、飲食店「お食事処 池田屋」が開店した。切り盛りするのは、浪江町出身で昨年6月に神奈川県から大熊町に移住した池田孝代さん(62)ら親子3人だ。池田さんは「地域の大衆食堂として『あそこに行けば誰かに会える、ほっとできる』ような場所にしたい」と語る。
東京電力福島第1原発事故に伴い、県内6町村にある復興拠点内に飲食店が開店するのは初めて。店では、昼は一押しのミートソーススパゲティをはじめ、定食や麺類などをそろえ、夜はホルモン焼きなどに加え、お酒やおつまみも提供。池田さんと長女の倫千代(みちよ)さん(32)、長男の謙太さん(27)の3人が経営する。
浪江町出身の池田さんは、東京都の調理師学校を卒業後に浪江町に戻り、両親と共に喫茶店を運営。29歳の時、結婚を機に神奈川県に移り住んだ。子育てに奔走するさなか、夫が病気で他界。子どもの学費のため豚丼の専門店などを始め、昼夜を問わず働いた。
子育てが一段落し、浪江に戻ろうと考えていた時、東日本大震災が起きた。津波で請戸地区の実家は跡形もなくなった。両親は無事だったが、周辺は災害危険区域に指定された。
だが、首都圏で過ごし続けることには抵抗があった。大熊町への移住を決めたのは、町内に開校した教育施設「学び舎(や)ゆめの森」の存在だ。長女の4歳の息子が伸び伸びと成長できる環境をつくってあげたいと思い、昨年6月、一家4人で移住した。「空は広くて空気はおいしい。大声で話もできる。もう最高」と池田さんはうれしそうに語る。
かつて浪江町で運営していた喫茶店は現在、居酒屋「食事処いふ」に姿を変え、兄の新妻泰さん(64)が経営する。きょうだいそろって被災地で、人々のにぎわいをつくろうとしている。池田さんは「福島の復興のために働く人たちに活力を与えるような店にしたい」と笑顔を見せた。
場所は大熊町下野上字金谷平542の2。不定休で、営業は午前11時から午後9時まで通しで行い、金、土曜日は午後10時まで。
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