【夏の高校野球・白球の記憶】希望の象徴...思い受け継ぐ新設校

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当時を振り返る菅野さん

 「『最後まで全力疾走』の小高工野球部の伝統は変わらない」。小高工と小高商が統合し、昨春開校した小高産業技術は、初の甲子園を目指して2度目の夏を迎える。

 2016(平成28)年7月に避難指示が一部を除き解除された南相馬市小高区のグラウンド。部員たちの威勢のいい掛け声と白球を打つ金属音が響く。主将の大森隆宏(3年)は「震災で傷ついた小高を元気にするために一戦必勝で勝ち抜きたい」と最後の夏に懸ける決意を語る。大森は14年夏、福島大会で県内高校野球史上初の完全試合を達成した小高工の菅野秀哉=法大4年=に憧れ、野球部の門をたたいた。高校2年を迎えると同時に統合で校名は変わったが、そのDNAはえんじ色のユニホームとともに受け継がれている。

 東日本大震災から4度目となったあの夏。菅野は細身の長身から伸びのある直球と変化球で打者を次々と打ち取り、完全試合を遂げた。しかし、快投を続ける菅野も4回戦、聖光学院との対戦で涙をのむ。当時を思い出し、菅野は「高校で野球は終わりだと思っていた」と話す。しかし卒業後、菅野は法大に進む。あの夏に味わった悔しさが原動力となりプロ入りへの夢が一層強くなったからだ。校名の変わった母校は今年、あの時、菅野が完全試合を達成した福島高専と初戦で対戦する。「エースの2年生はいい投手だと聞いている。完全試合をやってほしいですね」と期待する。

 本県に甚大な被害をもたらした東日本大震災と福島第1原発事故。高校野球を取り巻く状況も大きく変化した。3度の甲子園出場を果たした古豪双葉など双葉郡の五つの県立高は休校を余儀なくされ、一方で15年4月に開校した「ふたば未来学園」には新たな野球部が生まれた。そして同校は昨年、夏の福島大会で初勝利を挙げた。復興がようやく進み始めた広野町のグラウンド。練習に励む選手たちは「希望の象徴」になろうと、古里への思いを持つ。主将の小松来紀(3年)は「(休校になった)高校の野球部OBもチームを支えてくれている。双葉郡の代表として感謝の気持ちを胸に活躍する」と前を向く。

 100度目を迎える全国高校野球選手権大会。高校野球の聖地を目指し、球児たちの"一度きりの夏"が再び幕を開ける。(敬称略)

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