処理水報告書、事故も想定

 

 トリチウムは、核実験や原子力施設で作られる人工の放射性物質である一方、自然界で作られる天然の放射性物質でもあります。このトリチウムを含む処理水の放出に関して、先日、国際原子力機関(IAEA)から、その安全性を評価した報告書が公表されました。

 その報告書では、タンクでの保管や放出に関して、予期せぬ事故が起こった際、周辺の環境への影響や、地域の住民の方々への放射線の影響がどの程度となるかの評価もなされています。

 いくつかの事故を想定していますが、一つは、処理水を通すためのパイプ(管)が損傷し、十分に希釈されていない処理水が海に流れ込む場合です。

 実際にそのような事故があった場合、すぐに発見されるよう体制が組まれていますが、保守的に考えて、この損傷が20日間発見されず、全部で10個のタンクに保管してある処理水が流出した場合を想定しています。

 そして、長い時間、船の上で仕事をする漁師さんを代表として、放射線に対する防護策を特に何も行わず、取ることが禁止されている地域の海産物も摂取する場合の、事故からおおよそ1カ月で受ける放射線の量を計算しています。

 タンクのどの部分のパイプが損傷するかによっていくらかの差はあるものの、このような事故の場合に受けると推定される放射線の量は、私たちが自然界から1年間で受ける放射線の量のおおよそ1万分の1程度であることが推定されています。