がんと放射線「因果関係」解明進む 初期の被ばく線量情報は重要

 

 「原発事故初期の放射性ヨウ素による内部被ばく線量の情報は極めて重要。調査を進めていくべきである」。甲状腺検査を巡り、県民健康調査検討委員会は「中間取りまとめ」でそう指摘している。

 事故直後の甲状腺被ばく線量が把握できれば、甲状腺検査で見つかるがんと放射線との因果関係の有無の解明に役立つ。しかし、甲状腺被ばくの主因となる「ヨウ素131」は半減期が8日間と短い。事故直後に得られたデータから当時の被ばく線量を推計する研究が進められている。

 研究では、事故直後に子どもたちの甲状腺を測定した実測値のほか、当時測定された衣服や体表面の汚染データなど、残されたさまざまな実測値を活用している。

 推計に取り組む国際医療福祉大クリニック(栃木県)院長の鈴木元氏(放射線病理学)は昨年10月、1歳児の甲状腺被ばく線量(等価線量)の平均値は40ミリシーベルト未満で、安定ヨウ素剤を飲む目安とされる50ミリシーベルトを下回ったと発表した。国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR(アンスケア))が2013年報告書で示した推計値の7~69%にとどまる数値だった。