エフレイ、創造の下地づくり 浪江に設立、30年度までに自前施設

 

 福島国際研究教育機構(エフレイ)が浪江町に設立され、10月1日で半年を迎える。「世界に冠たる創造的復興の中核拠点」を掲げ、最近は研究開発の委託先を相次いで公募。5分野を率いる顔ぶれも各領域の権威者で固め、研究開発の下地を着々と築いている。

 エフレイは研究開発を進めるに当たり〈1〉ロボット〈2〉農林水産業〈3〉エネルギー〈4〉放射線科学・創薬医療〈5〉原子力災害に関するデータや知見の集積・発信―を重点5分野と位置付けた。国内だけでなく、世界が抱える課題の解決を意識し、本県ならではの優位性を発揮できる研究開発に取り組む。

 例えばエネルギー分野では、水素の可能性を最大限引き出すネットワーク形成などを進める。原子力災害を経験した本県を脱炭素の「世界的先駆けの地」にするため、戦略の一端を公募資料にのぞかせた。同分野長には新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)技術戦略研究センターの矢部彰フェローが就く。

 一方、エフレイの研究は当面は公募先への委託がメインで、自前施設をまだ持っていないのが現状だ。政府が6月に示した整備案によると、施設にはロボットなどの最新の研究成果を取り入れつつ、住民らと交流する空間も創出される。エフレイは整備計画を年度内に固め、2030年度までの施設完成を目指す。

 研究者受け入れ環境必須

 エフレイを地域に根付かせて新産業の集積や研究成果の産業化を果たすには、国内外から集まる数百人の研究者とその家族らを受け入れる生活環境づくりが鍵を握る。

 浪江町のJR浪江駅西側にある川添地区で、面積は約16.9ヘクタール。現在は農地や住宅地で、国が買い上げる計画だ。

 町は、多言語化の促進や住居整備にエフレイと協力して取り組むことで、ハード、ソフト両面から海外の研究者の受け入れ準備を加速させたい考えだ。

 併せて駅前の再開発も進んでおり、地元からは「エフレイと(駅周辺との)一体的な施設整備や、地元企業との連携につながってほしい」と期待の声が上がる。

 エフレイの山崎光悦理事長は「私たちのミッション(使命)は新産業を根付かせ、住みよい地域をつくることだ」と意欲を見せる。

 波及効果が焦点 知名度の低さ課題

 国家プロジェクトと位置付けられたエフレイを巡っては、設置効果をどのように広域へ波及させていくかが焦点だ。

 第1期(2023~29年度)の7年間で約1千億円の投資が見込まれ、有識者会議では将来的な地域での雇用創出を「5000人規模」と描いた。国や県、周辺15市町村、研究機関など34団体でつくる協議会は、研究開発と広域連携の調整機能を併せ持ち、エフレイを核とする議論が進む。

 エフレイは大学や市町村などと連携に向けた基本合意を結んでおり、既に7件になった。連携協定は今後も増える見通しだ。市町村は研究者の生活環境整備や情報発信などで協力し、エフレイは地元の要望を吸い上げ、研究開発や産業化に生かす。山崎光悦理事長らは学生向けトップセミナーを各地で開き、人材育成に努める。

 東北大が浜通りで新拠点の設置を模索するなど、エフレイへの関心は県境を超える。ただ、エフレイは発足したばかりで、知名度の低さが課題だ。第1期は基盤固めと存在感の向上を最優先し、発展への礎を築く期間となる。