処理水放出開始から半年、24年度は7回 タンク整理、解体着手へ

 

 東京電力福島第1原発で発生した処理水の海洋放出開始から半年が経過した。本年度は4回に分けて計3万1200トンを海に流す計画で、現在は本年度最後の放出を行っている。東電は2051年までに全ての処理水を処分することを目指しており、今後はトラブルなく海洋放出を継続し、処理水を保管していたタンクの解体で敷地を廃炉作業に向けて有効活用できるかが鍵となる。

 第1原発では、核燃料が溶け落ちる炉心溶融(メルトダウン)を起こした1~3号機原子炉建屋の破損部から地下水や雨水が流入し、セシウムなど放射性物質を含む汚染水が発生している。汚染水を多核種除去設備(ALPS)で浄化したものが処理水だが、分離が難しい放射性物質トリチウムは含まれたままだ。

 東電は、処理水に含まれるトリチウムを、国の基準(1リットル当たり6万ベクレル)の40分の1に当たる同1500ベクレル未満になるまで大量の海水で薄め、1日当たり約460トンを海底トンネルを通じて沖合約1キロ地点から海に放出している。昨年8月24日の放出開始後、これまでに周辺海域の海水や魚類のモニタリング(監視)で異常は確認されていない。

 既に終了した本年度3回の放出量は計2万3351トン、トリチウム総量は年間計画(約22兆ベクレル)を大幅に下回る約3・2兆ベクレルだった。新たに発生する汚染水を考慮すると、本年度計4回の放出でタンク10基分の処理水が減少することになるという。新年度は約5万4600トンを7回に分けて放出する予定だ。

 また東電は新年度、処理水を保管するタンクの整理、解体に着手する計画だ。解体した場所には、3号機の溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しに向けた関連施設の建設を想定している。解体されるタンクは21基で、面積は約2400平方メートルになるとみられる。

処理水希釈と放出のイメージ

 汚染水発生、年々減少

 東京電力は新たな汚染水の発生を減らすため、サブドレンと呼ばれる井戸から地下水をくみ上げたり、地面をコンクリートで覆うフェーシングなどを進めることで建屋への水の流入を抑制している。東電によると、1日当たりの汚染水発生量は減少傾向にあり、本年度(1月17日現在)は、約80トンとなっている。

 東電によると、15年度には約490トンのペースで発生した。その後、凍土遮水壁の運用が始まるなどして、右肩下がりで推移。22年度は降水量が少なかったこともあり約90トンまで減少し、25年度に100トンを目指すとしていた目標を前倒しで達成している。

 東電は、今後も局所的な建屋の止水などを進めることで、28年度までには、汚染水発生量を約50~70トンまで減少させたい考え。

汚染水発生量の推移