除染土、農地造成に再利用 飯舘・長泥で実証事業

 
除染土を再利用して造成した農地が広がる環境再生事業の現場。写真は第4工区=飯舘村長泥地区

 除染で出た土壌を農地造成に再利用する環境再生事業が進められている飯舘村長泥地区の特定復興再生拠点区域(復興拠点)。事業は2018年11月に始まった除去土壌などの廃棄量を減らすための実証的な取り組みで、環境省は、中間貯蔵施設に搬入された除去土壌の県外最終処分の実現に向けた鍵を握ると期待する。

 農地造成では、村内の除染土のうち、放射性セシウム濃度が1キロ当たり5千ベクレル以下のものを再生資材(盛り土)として農地をかさ上げし、その上に別の土を約50センチかぶせる「覆土(ふくど)」を行う。東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が昨年5月に解除された復興拠点に位置付けた186ヘクタールのうち、全4工区計22ヘクタールを農地造成の事業区域とし、21年に盛り土工事に着手した。

 福島地方環境事務所によると、このうち4工区では覆土も完了し、1工区については、調査、設計後に盛り土工事発注の手続きを進める。2~4工区の盛り土工事には計約20万立方メートルの再生資材が使用された。

 再生資材で造成された一部エリアではこれまでに、農地利用を見据えた野菜の実証栽培や水田試験が実施されてきた。野菜については、国の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超える放射性セシウムは検出されなかったことが確認されている。水田試験では、水田に求められる透水性や排水性などの改善、向上を図ってきた。

 同事務所の担当者は「地域住民と意見を交わしながら、事業を着実に進めていく。多くの人に長泥地区の現状に目を向けてもらうことで、環境再生事業の理解醸成にもつなげていきたい」としている。