帰還居住区域再生本格化へ これまで4町設定

 
点的、線的な復興拠点が解除され開けられた小良ケ浜地区につながるゲート=2023年11月30日午前9時、富岡町

 東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域の再生を巡り、政府はこれまで大熊、双葉、浪江、富岡の4町の特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域の一部に「特定帰還居住区域」を設定した。4月以降にも、帰還を希望する住民の宅地を中心とした生活圏の除染など、避難指示解除に向けた取り組みが本格化する見通しだ。

 特定帰還居住区域は、昨年6月施行の改正福島復興再生特別措置法で制度が創設された。帰還困難区域を抱える南相馬、大熊、双葉、浪江、富岡、葛尾、飯舘の7市町村が特定帰還居住区域の範囲を定めた「復興再生計画」を作成し、政府が認定すると、除染や家屋の解体などを国費で進める。政府は2024年度予算案で関連事業費約450億円を計上した。

 同区域の範囲は、大熊町が10行政区の一部の計約440ヘクタールで、198世帯が帰還意向を示している。双葉町は昨年12月に先行して除染が始まった下長塚、三字の両行政区の一部(計約50ヘクタール)に6行政区を追加して範囲を拡大する方向で調整を進めている。浪江町は宅地が残る全12地区の計710ヘクタールで、256世帯が戻る意思を示している。富岡町は小良ケ浜、深谷、新夜ノ森の3行政区の計約220ヘクタールで92世帯が帰還を望んでいる。南相馬、葛尾、飯舘の3市村も対応を検討する。

 政府は希望者全員の帰還を20年代に実現させる方針を掲げる一方、帰還する意向のない住民の家屋や土地の扱い方に関する方針を示していない。帰還困難区域を抱える双葉郡5町村でつくる協議会などは復興拠点外の家屋で荒廃が進み、火災が発生する恐れがあることを懸念。住民からも「自宅が朽ちていくさまを見ていられないので解体してほしい」という要望が相次いでいるとし、政府に対応方針を示すよう要請を続けている。