「福島の今」知りたい...ホープツーリズム、高まる注目度

 
浜焼きの串打ちを体験する参加者。松川浦ガイドの会のもてなしで夕食を楽しんだ

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興の歩みを発信する旅行企画「ホープツーリズム」の注目度が年々高まっている。ツアーの魅力や課題を探ろうと、県観光物産交流協会が主催した旅行会社向けのモニターツアーを取材した。

 2月末、旅行会社のエージェントら12人がツアーに参加した。一行はまず、東日本大震災・原子力災害伝承館や震災遺構「請戸小」を訪問。請戸小では、メッセージが残されたままの黒板などに静かに見入っていた。浅野撚糸(ねんし)が双葉町に置く工場なども巡り、被災後の産業再生の状況にも理解を深めた。

 茨城県の旅行会社から参加した多賀知樹さん(43)は「今の双葉郡は震災時のままの物と、その後新しくできた物の双方を間近で見ることができる」と印象を語り、「県外では『放射線のエリア』に行ってもいいのかという人がいまだにいる。そういう人をここに案内し、今の様子をしっかり伝えたい」と思いを語った。

 被災地の「光」も「影」も、ありのまま伝えるという旅行の趣旨を魅力と捉える意見も聞かれた。東京の旅行会社で米国人の富裕層向けに旅行を企画するカナダ出身のデイン・リンダさん(32)は「北米の富裕層は今まで、(定番の観光地で)日本の良いところだけを見てきたが、『本当の日本を見たい』という段階にきている。私は福島が次に向かう様子を旅行にしたい」とこの日のツアーを評価。一方で、「滞在日数を増やすには、宿泊施設の少なさが課題になる」とも述べた。

 ツアーには、イチゴ狩りなど体験の要素も多く盛り込まれた。特に盛り上がりを見せたのは、松川浦ガイドの会による夕食の浜焼きだった。同会の遠藤美貴子さん(55)は「伝統の浜焼き体験を売りに多くの人に来てもらい、交流を通じて魅力を発信していきたい」と意気込む。

 県外、国外の人の「今の福島を知りたい」というニーズは大きいと感じた。ホープツーリズムの拡大に向けては、ツアー内容をより魅力的なものにするとともに、宿泊施設を増やす取り組みも求められそうだ。(郡山総支社・近内雅基)