【温泉の楽しみ方(下)】豊富な泉質、選び堪能

 
硫黄泉で知られる福島市の高湯温泉・安達屋の野趣あふれる大露天風呂

 本県は各地に温泉が点在するが、湯に含まれる成分によって、色や香り、期待できる効果はさまざま。今回は、そんな温泉の泉質や効能について深掘りする。

 珍しい炭酸泉

 リスナーから寄せられた投稿にも、泉質に関するものがあった。例えば「金山町の炭酸泉の温泉は、シュワシュワのサイダーに漬かっているようで面白いし、珍しいと思います」(湯川村・ヨギボスガブリエルさん)、さらに「岳温泉や沼尻温泉、中ノ沢温泉のような、酸性で肌がキリッとしたり、硫黄の香りが強めだったりするのも、温泉に入っている感じがしていいのですが、私が好きなのは、トロッとした中性からアルカリ性の、肌がすべすべになりそうな温泉です。なので、磐梯熱海温泉が好きです」(いわき市・潜水猫さん)という「上級者」も。こんなふうに泉質や特徴を知っていたら、温泉選びがより楽しめそうだ。

 県内多彩な湯

 日本温泉地域学会会員で温泉入浴指導員の資格も持つ、天栄村在住のフリーライター滝野沢優子さんに本県の温泉の特徴を聞くと、国内では希少な放射能泉(ラジウム泉)や炭酸泉があることだという。また「温泉施設に掲示されている温泉分析書を見て、どんなお湯なのかが分かるようになると、温泉入浴の楽しみも倍増しますよ」とのアドバイスも。

 そこで、主な泉質と県内の代表的な温泉地を上げてもらった。

●酸性泉(岳温泉など)
 刺激が強く殺菌、収斂(しゅうれん)作用があり、皮膚病、湿疹、水虫などに効果が期待できる。肌の弱い人には不向き。

●硫黄泉(高湯温泉、いわき湯本温泉、中ノ沢温泉ほか)
 独特な硫化水素のにおいが特徴。硫黄分の血行促進作用で毛細血管が拡張するため、動脈硬化にも効果があるとされる。

●塩化物泉(熱塩温泉、早戸温泉ほか)
 塩分を多く含む湯。塩分が毛穴をふさぐため、保湿、保温効果で湯上がりポカポカ。

●単純泉(飯坂温泉、磐梯熱海温泉、湯野上温泉ほか)
 溶存物質が規定量より少ない温泉。肌への刺激が少なく、万人向け。pH8.5以上の「アルカリ性単純泉」は、アルカリ成分が肌の汚れを取る働きがあることから"美肌の湯"といわれる。「単純」という名前ながら、実は溶存物質によっていろいろ違いがあり、奥深い。

●放射能泉(猫啼温泉、母畑温泉、馬場の湯温泉など)
 ラジウムを含む温泉で、吸入することで細胞が活性化し、老廃物の排出を促進する(ホルミシス効果)。見た目は無色透明無味無臭ながら、「万能の湯」ともいわれる。痛風にも効果があるといわれる。日本には数少ない泉質。

 東京から移住した滝野沢さんから見た県内の温泉は「泉質もいろいろあり、豪華なリゾート施設から素朴な山の湯、秘湯、『ふだん着の温泉』そのままの共同湯など、個人の好みやその日の気分で選べるのがうれしい。湯量も豊富で源泉かけ流しの温泉施設が多いのも特徴だと思います」と魅力を語った。

 県内に長く住んでいると、温泉がすぐそばにあるありがたみをつい忘れてしまう。泉質や特徴を知って、福島だからこその温泉の恵みを満喫したい。(佐藤香)