【21世紀枠・磐城センバツへ】我ら被災地代表!台風乗り越え一丸

 
選抜出場が決まり、チームメートと手を握り合う選手=24日午後、いわき市・磐城高

 第92回選抜高校野球大会に21世紀枠で出場を決めた磐城。選手たちは昨年10月の台風19号で被災したいわき市を勇気づけようと野球に打ち込み、46年ぶりの"センバツ"切符をつかんだ。「自分たちの野球でいわきを元気にする」。球児たちは健闘を誓う。

 「21世紀枠での出場が決定しました」。24日午後3時すぎ、阿部武彦校長(60)から出場決定が告げられると、平静を保っていた選手の表情に笑顔が広がった。グラウンドの外に詰め掛けた一般生徒やOBからも「甲子園おめでとう」と喜びの声が上がった。

 いわき市の中心市街地にある同校は昨年10月の台風19号の被災地に程近い。同校の野球部グラウンドは大きな被害はなかったが、学校近くの平平窪、平赤井の両地区を中心に甚大な被害を受け、現在も住民が生活再建に追われている。

 台風が通過したのは、岩手県で開かれていた秋季東北大会2回戦を翌日に控えた13日だった。早朝に集合し練習してから現地に向かう予定だったが、被災直後の混乱で予定通りに集合できず、全員そろったのは午後1時30分ごろだった。

 友人が避難所にいるままだったり、午前中に浸水した親族の家を片付けるなど、災害が身近にあった部員もいた。会場に向かう道すがら、町にはがれきが転がり、災害ごみを運び出す市民の姿があった。

 木村保監督(49)は、「この光景を目に焼き付けろ」とあえて被災地の現状を意識させた。「自分たちが勝てばいわきも元気になる」(岩間涼星主将・2年)。監督の言葉で、選手たちの気持ちが一つになった。14日の2回戦は伝統のコバルトブルーのユニホームを真っ黒に汚す粘り強さで序盤の劣勢をはね返し、勝利した。

 困難はその後も続いた。雨水の影響で校庭の一部に水がたまったほか、氾濫した好間川に近い第2グラウンドが浸水したため、サッカー部やラグビー部と校庭を共用する機会が増えた。練習スペースが限られる中、送球や捕球の基礎的な練習に時間を割き、力を磨いた。

 逆境にも折れず、努力し続けるという姿勢は「つとめ励みて我等(われら)撓(たゆ)まじ」と校歌にも歌い継がれている。エースの沖政宗投手(2年)は「応援してくれる人たちに勝利を届けたい」と士気を高める。過去2度の出場では未勝利。3度目のセンバツで旋風を起こすべく、磐城ナインは白球を追い続ける。

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