ランナー『無念』...もう一度チャンスを 聖火リレー直前で中止

 
聖火リレーグランドスタートに向け、準備が進められていたJヴィレッジ=24日午後

 復興が進む本県を照らすはずだった聖火リレーは24日、五輪延期の方針を受けて中止となった。大会組織委員会は聖火を県内で保管する方針を示したが、聖火リレーは当面、白紙状態で具体的な計画は不透明な状況だ。当初の計画から変更を受け、聖火ランナーや県民からは、本県の復興を世界に再び発信するため、仕切り直しを求める声が上がった。

 「もう一度、リレーをするチャンスがあるならば走りたい」。東日本大震災の津波で家族4人を失い、26日の聖火ランナーに決まっていた南相馬市の上野敬幸さん(47)は、無念さをにじませながら前を向いた。

 津波で失った家族や津波犠牲者に向けて高々とトーチを掲げて走ろうと本番を待っていた。上野さんは「誰も悪くないし、しょうがない。関係者も精いっぱいだろう」と言葉を絞り出した。

 聖火リレーがスタートする予定だったJヴィレッジ(楢葉町、広野町)では24日午後も出発式典の会場設営や、大型モニターで県産農産物の安全をPRする映像が流れるなどリハーサルが進んでいた。しかし、スタート直前に中止となった。

 直前まで準備を進めていた自治体職員らは対応に追われた。会津若松市の担当者は「スタートまであと2日しかないのに分からないことばかり。問い合わせにも答えられない」、福島市の担当者は「積み上げてきた取り組みが一瞬で崩れ去り、振り回されている」とため息をつき、計画は振り出しに戻った。

 被災地を走る予定だった聖火ランナーは聖火リレーへの思いを強くする。

 JR常磐線大野―双葉駅間で電車に乗り、聖火の運搬を担当する予定だった声優・女優桜庭梨那さん(24)=双葉町出身=は「避難指示の一部が解除された双葉町を世界に知ってもらう機会」と語る。

 浪江町から福島市に避難する男性(81)は「浪江町のコースは原発事故からの復興が進む様子を見せられる場所」、広野町の会社員、男性(47)は「被災地で頑張るランナーが走る姿こそが復興を象徴し、世界の感動を呼ぶ」と被災地を走る意義を訴えた。

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