【つないだ襷・箱根駅伝100回】今井正人、走り続ける「山の神」

 
今も現役ランナーとして走り続ける今井。「箱根のインパクトを超える」ことが原動力となっている

 「箱根駅伝」として親しまれる正月の風物詩・東京箱根間往復大学駅伝競走は来年1月2、3日、節目の第100回大会を迎える。箱根路を彩ってきた本県ゆかりの選手たちの活躍を振り返り、今の歩みを紹介する。

          ◇

 「山の神、ここに降臨。その名は―」。2007年の第83回箱根駅伝。順大の往路優勝が決まる瞬間、テレビの実況から大会史に残る名フレーズが飛び出した。過酷な山上りの5区で神がかった強さを誇り、81回大会から3年連続で区間賞を獲得した今井正人=当時順大4年=を形容した言葉だった。

 箱根で「山上りのスペシャリスト」として名をはせたが、1年時は各校のエースが集う「花の2区」を走った。「エース区間に配置され、自分がそういう存在だと考えてもらっていることがうれしかった。大学の顔になれるように4年間、2区を走り抜く考えだった」

 初めての箱根路は、まずまずの区間10位。この時、2区の難所とされる権太坂や最後の坂道で5人を抜いた勝負強さが「山の神」への布石となった。

 上りの適性を見いだされ、2年時から5区を任された。2区を走れない悔しさもあったが「箱根駅伝で『箱根』の名が付くエリアを走れるのは5区と6区だけ。そこは意気に感じた」。伝説はここから始まった。

 2年時の81回大会は15位から驚異の11人抜きで4位に押し上げ、その名をとどろかせた。翌年の82回大会では4区の村上康則(田村高卒)から6位でたすきを受けると、土砂降りの雨に加え、前年よりコースが2.5キロ延びた影響をものともせず、トップに浮上。順大を17年ぶりの往路優勝に導いた。

 最上級生になり、主将として迎えた83回大会。赤と白のストライプのたすきをかけた今井は4分以上あった1位との差を逆転し、2位に1分42秒差をつけてフィニッシュテープを切った。4人抜きで区間新記録(当時)を樹立。この時に生まれた「山の神」というフレーズは、ファンの心に強烈なインパクトを残した。

 「山の神」誕生を巡っては、こんな裏話がある。「テレビの事前取材に(当時日体大3年で5区の)北村聡君が『神、降臨してますよ』というふうに言ってくれたのが始まりみたいです。いまだに『今井さん、感謝してくださいよ』と言われます」。ライバルの思いがけない一言がきっかけとなり、生まれた言葉だった。

 箱根駅伝で輝かしい成績を残した今井は、マラソン選手として今も走り続けている。「『山の神』と言われることに自分で意識する部分はないが『マラソンでそのインパクトを超えるんだ』という思いはいまだにあって、現役を続けられている」。箱根から17年がたつ今も、その言葉は心に灯をともし続けている。(敬称略)

箱根駅伝成績

 いまい・まさと 南相馬市小高区出身。原町高、順大卒。トヨタ自動車九州所属。主将として臨んだ2007年の箱根駅伝では、総合優勝を果たした。同年にみんゆう県民大賞を受賞。15年東京マラソンでは当時日本歴代6位の2時間7分39秒をマークした。39歳。

おすすめPickup!ニュースの『玉手箱』

いわきFC連勝、5位浮上 栃木に1-0逃げ切り、サッカーJ2