原子炉の形で違う発生量

 

 先日、他国の原発からトリチウムが放出されたというニュースが報道されました。中国が国内で運用する複数の原発が、今夏にも始まる福島第1原発の「処理水」の海洋放出の年間予定量と比べ、最大で約6・5倍の放射性物質トリチウムを放出しているというものです。

 トリチウムは最も軽い元素である水素の仲間で、核実験や原子力施設で作られる放射性物質です。原子炉の中では電気をつくる反応を起こす途中に、さまざまな過程でトリチウムができるのでした。そして、原発でできたトリチウムは基準値を確認し、これまでも主に海へ放出されていました。そのため、初めてトリチウムが放出されたかのように表現するのは正しくありません。

 また、原子炉の形は、世界中でいくつかの種類があり、原子炉の形によって、トリチウムの発生量が異なります。放出されるトリチウムの量が原子炉の形によって、数十倍から数百倍異なることが知られています。

 特にトリチウムの放出量が多いのが、使用済み核燃料再処理施設です。フランスの再処理施設では、毎年、事故前の福島第1原発から毎年放出されていたトリチウムの、合計で数千倍のトリチウムが液体や気体の形で放出されていたことが知られています。

 トリチウムの放出に関して、他が放出しているから、何も問題ないかのような主張はよろしくないと個人的には思いますが、実際にこれまでもいろいろな原子力施設から安全を確認後に放出されてきたことも事実です。