体への影響、比較的小さい

 

 先日、他国の原発からトリチウムが放出されたというニュースが報道されました。中国が国内で運用する複数の原発が、今夏にも始まる福島第1原発の「処理水」の海洋放出の年間予定量と比べ、最大で約6・5倍の放射性物質トリチウムを放出しているというものです。

 原子炉の中では電気をつくる反応を起こす途中に、さまざまな過程でトリチウムができます。そのため、これまでも原発でできたトリチウムは基準値を確認し、主に海へ放出されていました。

 トリチウムの放射性物質としての特徴の一つは、その出す放射線のエネルギーがとても小さいことです。ベータ線という放射線を出しますが、このエネルギーがとても小さいため、空気中では1センチも飛ぶことができません。放射線の身体への影響はその量の問題ですので、トリチウムによる身体への影響は比較的小さくなります。

 そのため、福島原発から処理水が放出されたとしても、原発の周囲で取れた海産物を日常的に食べて、そして海水浴をするなどした場合に放射線を浴びる量は、多く見積もっても自然界の放射線から私たちが日常的に受けている放射線の量の7万分の1程度にとどまると推定されています。