自然界線量の7万分の1

 

 廃炉作業が進められている原発周囲の敷地内タンクには、放射性の水素である「トリチウム」が保管されています。トリチウムは、核実験や原子力施設で作られる人工の放射性物質である一方、自然界で作られる天然の放射性物質でもあります。

 このトリチウムについて、濃度を確認し、薄めた上で原発から1キロ離れた海への放出が計画されていることは報道の通りです。この放出に関して、先日、国際原子力機関(IAEA)から、その安全性を評価した報告書が出版されました。

 その報告書ではさまざまな内容が評価されていますが、その一つが、放出が行われた際にその周囲で取れた海産物を日常的に食べて、海水浴などをした場合に浴びる放射線の量です。

 放射線の量は外部被ばくと内部被ばくの両方が評価されています。海産物を食べた場合の内部被ばくだけではなく、海水浴であれば、海の中で浴びる外部被ばくと、海水浴中に海の水を飲んでしまう場合の内部被ばくといった具合です。その他にも海岸の堆積物からの影響や、波しぶきを吸ってしまう場合など、さまざまな放射線を浴びるかもしれない経路を想定して計算されています。

 その結果、子どもから大人までの全ての年代で、多く見積もっても自然界の放射線から私たちが日常的に受けている放射線の量の7万分の1程度にとどまると推定されています。全体として非常に低い値ですが、その内訳は90%以上が内部被ばくでした。