自然の放射性物質、魚にも

 

 トリチウムは、核実験や原子力施設で作られる人工の放射性物質である一方、自然界で作られる天然の放射性物質でもあります。このトリチウムの放出に関して、先日、国際原子力機関(IAEA)から、その安全性を評価した報告書が出されました。

 その報告書では、放出が行われた際にその周囲で取れた海産物を日常的に食べて、海水浴などをした場合の放射線の量が評価されています。

 その結果、放出に伴って受ける放射線の量は、全ての年代で、多く見積もっても自然界の放射線から私たちが日常的に受けている放射線の量の7万分の1程度にとどまると推定されています。その内訳は90%以上が内部被ばくでした。

 その一方、自然からの放射線に関して、日本では魚介類の摂取が多いため、世界平均に比べて、魚介類の、特に内蔵に含まれる「ポロニウム」と呼ばれる放射性物質から受ける放射線が多いです。

 そのため、処理水の放出に伴って受けると考えられる放射線の量は、ポロニウムをはじめとする自然の放射性物質によって、日常的に私たちが魚介類を摂取することによって受ける放射線の量全体の1万分の1から2万分の1程度となると考えられます。